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「運行管理者」は足りているのか? 毎年約3000人ペースで増加するも(2022/01/30)


「業務を回す能力が必要で若手の登用難しい」

運行管理者は運送業の許可取得に必要不可欠だ。ドライバーが安全に業務を行うよう指導する役割も担っている。また、ドライバーの労務管理をしっかりと行う必要があり、運行管理者の重要性は高まっている。昨今、ドライバー不足が深刻化しているが、その司令塔である運行管理者は足りているのだろうか。

毎年約3000人のペースで増加

 国土交通省の調査によると、運行管理者として選任されている人は、毎年約3000人のペースで増加し、令和元年度末で15万9000人、令和2年度末には16万1000人にまで増えている。
 この数字には、運行管理者試験に合格したが運輸局に届出されていない人、退職や廃業で運行管理者を辞めた人などは含まれていない。あくまで現場で実務を行っている人の数である。
 運行管理者試験の合格者数はどうだろうか。合格者数は、平成21年から令和2年までの間、年間約2万人が試験に合格している。
運行管理者試験センターは、令和元年3月に運行管理者試験についての実態調査を行っている。
 それによると、試験合格者の年齢構成は、30~40歳代が全体の約7割を占め、20歳代が2割、50歳代以上が1割ほど。管理者試験の合格者に限れば、今のところ高齢化の問題は生じていない。
 また、この調査では、受験者が勤務する運送事業者に対し、アンケートも実施。
その中で「運行管理資格者の充足状況」を尋ねたところ、50・6%の事業者が「十分足りている」と回答。
 「不足する見込み」と答えた事業者は20・0%、「(資格者の)退職状況等をみながら今後検討する」と答えた事業者は29・4%だった。

運行管理も営業所も任せられる人材いない
 
 全日本トラック協会に話を聞いたところ、「運行管理者が足りずに困っているという話は、ほとんど聞かない」とのことだった。その一方で「運行管理もできる、営業所の責任者を任せられるような人材がおらず、事業を拡大できない」という話は多く寄せられているという。
 関西を中心に一般貨物運送を行っている運送会社社長は運行管理者の業務について、「運行管理者には、運行業務、営業活動、法令遵守など、業務を円滑に回すための知識・経験・能力が必要で、若手の登用が難しい。資格証だけで、できる仕事ではない」と業務の難しさを指摘する。
「得意先、会社、運転手の三者間で、常に板挟みになる。ストレスの多いポジションだから、若い人は、あえて手を挙げてやろうとしない」とも話す。
また、ドライバーから運行管理者になった経験のある、物流関連の求人情報サイトの営業担当者は、「ドライバーから運行管理者になると給料が下がってしまうため、運行管理者の資格を取っても、実際には運転の仕事を続ける人が多い。そもそもドライバーは事務や営業などの仕事をやりたくないからドライバーをしている」と説明する。
取材を行った運送会社各社に運行管理者の年齢を尋ねたところ、多くは40代後半~50歳代で、20代~30代の運行管理はいなかった。

若手社員のサポート体制を作るべき

 三重県の運送会社社長は「ドライバー経験のない40歳代の女性社員を運行管理者にして上手くやっているところもある。女性の方が人当たりが良く、お客さんとも運転手ともあつれきが生じにくいからではないか。若手が運行管理者になりたがらないのは、ベテラン運転手との人間関係に気を遣うからだ。簡単には解決できない問題だ」と話す。
 自身も運行管理者の経験がある大阪府の運送会社社長は、「これからは、運行管理者になりたいと思っている若手社員のサポート体制を、経営者が責任をもって作るべき。配車、営業、労務管理などの業務を分離して運行管理者の精神的負担を減らすような取り組みも必要。運行管理者は皆の不満のはけ口ではない。責任とやりがいのあるポジションだということを社員全員に理解させることが大切」と話していた。


【グラフ】運行管理者試験(貨物)の合格者推移 平成21年から令和2年までの12年間の合格者数は238、711人。平均約2万人が合格。