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論 調 トラック運送業界の旧弊打破を考える(2022/07/18)
運輸事業振興助成交付金制度を熟知しているか?
フリージャーナリスト・本紙関東総局長=延寿寺幸次郎
トラック運送業界は、今や未曽有の「内憂外患」の状況にある。戦後77年の業界の歴史の中でも、経験したことの無い「難局」に直面してきている。まさに、事業者個々にとっては、生死をかけた「正念場」といっても、いいだろう。その要因からみて「強制淘汰の時代」と言っても過言ではない。ここ2~3年のサバイバルに勝ち抜き、生き残れば、過当競争から解放されるであろう。
そうすれば、「トラック運送需給」が、安定化する。問題は、事業者個々において、この時点まで持ち堪えられるかどうかである。
当面する当業界の大問題はこれまで、本欄で再三取り上げて来た「燃料高騰問題」、ロシアのウクライナ侵攻を端緒に、食品は、穀物だけで無く、魚介類をはじめありとあらゆるものが値上がりしている。
この一連の値上がりを背景とした「荷主」からの「運賃値下げ圧力」も看過できない問題である。マクロ視点で見ると、我々運送業者にとっては、外せない重要な問題ばかりである。しかし、「近視眼的」になってはいけない。
看過できない「重要な問題」が多くありながら、それらを放置している点が多くある。その代表格が「運輸事業振興交付金制度」の問題である。
今回は、この「制度」を中心にメスを入れておきたいと思う。
◆トラック運送業界の
旧弊打破を考える!
トラック運送業界の旧弊打破を考える上で、外せないのが「運輸事業振興助成交付金制度を熟知しているか」という点である。
◆「運輸事業振興助成交付金制度」について!
「運輸事業振興助成交付金制度」の趣旨については、
「『軽油引取税の税率』について特例が設けられていることが、軽油燃料とする自動車を用いて行われる運輸事業に鑑(かんが)み、当該事業費用の上昇の抑制及び輸送力の確保に資し、もって国民の生活の利便の向上及び地球温暖化対策の推進に寄与するため「当分の間の措置」として、当該事業の振興を助成するための措置として交付される」(運輸事業の振興の助成に関する法律:平成23年制定)とある。
その交付金は、「都道府県」から「各都道府県トラック協会及びバス協会」に交付される。
ここで注目すべきは、交付金は「都道府県の努力義務」とされている点である。したがって、ご記憶の方も、おられると思うが、かつて橋下徹大阪府知事時代に、大阪府から大阪府トラック協会には交付金「0」という時代があった。
筆者がここで強調しておきたいことは、「運輸事業振興交付金」については、都道府県トラック協会、(公社)全日本トラック協会は、全く、発言権がないということなのである。
換言すると、国から、都道府県に「地方交付税交付金」として、入金したものを「知事の裁量(努力義務)で、都道府県トラック協会に交付するということである。
この都道府県とラック協会に集まった交付金(年間200億円~250億円)のうち「出捐(えん)金(上納金)」としで、その5分の1程度が、全日本トラック協会に、毎年、上納されているのである。そこに、トラック運送業界の介入する余地が、全く無いのである。
これで、いいのであろうか?
◆軽油引取税は、一般財源化されて久しいのに、なぜ未だに暫定税率分を支払う必要があるのか?
この「運輸事業振興助成交付金制度」策定の背景で、忘れてならないのは、「軽油引取税」が、平成21年度税制改正によって、「道路特定財源制度」が廃止され「一般財源化」されたのに、以来、継続して「暫定税率分」が残存しているのである。
「本則」でいけば、1キロリットル1万5000円で購入できるものを、「暫定税率分」があるために、我々は、実際には、1キロリットル3万2100円で購入しているのである。
この点も「運輸事業振興助成交付金制度」が施行された背景である
◆「トラック運送業の運送機能が失われる危機」といわれながら、なぜ、事業者個々の問題意識は、薄いのか?
前述のように、トラック運送業界は、未曽有の問題点を包含し、「トラック運送業の運送機能が失われる危機」といわれながら、なぜ、事業者個々の問題意識は、薄いというのが現実だ。
今号の本欄では、主に「運輸事業振興助成交付金制度」を取り上げたが、読者の方々の多くは、その趣旨と目的について、知らなかった方も、多いように思う。
現状のような未曽有の難局の時にこそ、業界の関連事項について、深く関心をもって頂きたいと思う次第である。