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「運行管理者は医療従事者ではない!」 ドライバーの健康管理(2022/07/24)


会社はどこまで責任を負うべきか


 先日、奈良県の運送会社社長から、次のような話を聞いた。
「私は会社を経営するかたわら、運行管理業務も行っているのだが、管理すべき項目が多すぎて、かなり負担になっている。会社としてドライバーの健康に責任を負うのは当然だ。しかし、ドライバー本人や家族が注意すべきことにまで運行管理者が首を突っ込むのは、やり過ぎのような気もする」
 運転中のドライバーが脳梗塞や心不全で倒れ、意識を失った場合、重大な事故が発生する恐れがある。一般の方が事故に巻き込まれた場合は、会社が安全管理上の責任を問われる。


 国土交通省自動車局がまとめた「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル(平成26 年改訂版)」によると、運行管理者によるドライバーの「就業上の措置の決定」(トラックを運転させても良いかどうかの判断)として、
「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある一定の病気等の前兆や自覚症状を確認するとともに、(中略)当該症状等の程度が著しいかどうか、慢性化しているかどうか、複数の関連症状が併発しているかどうか等を総合的に判断」することが義務付けられている。
「乗務員台帳・運転者台帳に記録することが望ましい事項」にも「運転者の健康状態(疾病等、治療、服薬等)」と明記されている。
 奈良県の運送会社社長の言葉を借りれば、「ドライバーが血液をサラサラにする薬をきちんと服用しているか。休みの日に酒を飲み過ぎていないか。脂っぽい物ばかり食べていないか。会社(運行管理者)が責任をもって管理しなければならない」ということになる。


 同マニュアルには「脳・心臓疾患に係る前兆や自覚症状」の「乗務中止の判断目安」として、次のように記す。
「左胸、左肩から背中にかけて、痛みや圧迫感、締め付けられる感じがある」「息切れ、呼吸がしにくい」「脈が飛ぶ、胸部の不快感、動悸、めまいなどがある」
「片方の手足、顔半分の麻痺、しびれを感じる」「言語の障害が生じる」「片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠けるなどの知覚の障害が生じる」「強い頭痛があるか」等のチェック項目が挙げられている。
 しかし、先の運送会社社長は、「運行管理者は医療従事者ではない。ドライバー本人や家族からの申告がなければ、重大な疾患の兆候でも見逃してしまう」と指摘する。
 
 国交省自動車局安全政策課の専門官は次のように話す。
「中小運送事業者さんの運行管理者が多忙なのは、国としても把握している。とはいえ、健康に関する管理項目を簡素化することはない。また、管理者がチェックすべき項目を義務化(法令により明確に指定)することも考えていない。ドライバーの健康に起因する事故を防止する取り組みとして、毎年マニュアルやガイドラインの更新を行っており、一定の成果も出ている。今年3月には視覚障害対策のマニュアルも新たに更新している。運送事業者さんは、ぜひ参照していただきたい」
 さらに、「脳ドックなどスクリーニング検査を受診する際の助成金制度も、各地のトラック協会、事業者が加入している健保組合などが設けているため、活用してほしい」という。