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大手のドライバーが中小で副業  働き方改革による給与減少の影響(2022/09/13)




残業代を中小が負担する格好に




「働き方改革」により、ドライバーの労働時間は減少傾向にある。労働時間が減ると収入減になると考えられるが、ドライバーの転職も聞かれるようになり、また、ドライバーが副業で他の運送会社で働くケースも出てきている。食品輸送を行っているA社では、現在、大手運送会社のドライバー3人をアルバイトとして雇っている。

 
 A社社長は、「3人とも中・長距離の運転歴が18年以上のベテランで仕事ぶりは真面目。会社として貴重な戦力になっている。彼らの話によると、コロナで仕事が減ったことに加え、働き方改革の影響もあり、残業代は以前と比べ3~4万円以上減っている。子供の学費や自分の小遣いを稼ぎたいことから、休日や空いた時間にアルバイトに来ている。こうしたアルバイトのドライバーの給与は、連休が重なる月だと8万円くらいになることもある」と話している。
 平日は大手の運送会社で働き、土日祝に食品輸送など平日以外でも稼働している運送会社で働くケースが目立ってきている。
同じく、食品輸送を行うB社の社長は、「短時間でもOKという条件でバイト募集をかけると、日によっては5件以上面接の応募が入ることもある」と話す。
 しかし、「大手運送会社の長距離ドライバーをバイトで雇ったこともあるが、配達先からクレームが来るなど、仕事ぶりにかなり問題があったため、それ以降は大手運送会社のドライバーは雇わないようにしている」という。
 また、B社社長は、「そもそも大手運送会社のドライバーをバイトで雇うというのは、彼らの残業代を我々中小が負担するようなもので、運送業界の動きとして、どうなのかと思う」と首をかしげていた。


 令和2年8月に厚生労働省の労働政策審議会は、副業・兼業の実態を把握する調査を実施。調査は約16万人の男女を対象に行われ、それによると、副業をしている人の割合は9・7%。運輸業で働く人のうち、副業をしている人の割合は8・2%だった。
 運送業界の労務問題に詳しい奈良経営サポートの村上英治氏は次のように話す。
「2024年4月以降、運送業における時間外労働は、2~6ヶ月平均で月80時間以内、年960時間以内の上限規制が適用される。こうした動きを受け、ヤマト、佐川、日通など大手運送業者は、働き方改革に関する研究チームを立ち上げ、運賃値上げや未払い残業代対策などを進めている。
 その中で、残業の上限規制を守るため、ドライバーの労働時間削減が進められているが、週休3日、給与を6分の4にカットなどかなり大胆な取り組みも行われている。当然、ドライバーの収入は減ることになるため、運送大手ではドライバーの副業を容認する動きが広がっている」
 一方、奈良経営サポートの村上氏は、副業ドライバーを雇入れる際の注意点を挙げる。
「労働政策フォーラムが今年まとめた資料(『副業ガイドライン』の概要説明資料)によると、『副業・兼業の開始前に、先契約(本業)の法定外労働時間と、後契約(副業)の労働時間について、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内でそれぞれ上限を設定し、それぞれについて割増賃金を支払うこと』とされている。
 つまり、『本業+副業=総労働時間』とし、副業が時間外労働に当たる場合は、割増賃金を支払わなければいけないということである。『ガイドライン』なので法的拘束力はないが、きちんと割増分を支払わなければ、未払い請求訴訟を起こされる可能性がある」