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クローズアップitiran

4日勤務で給料30万円支払い(2022/09/25)


無断欠勤続けるドライバー 監督署に駆け込み


「解雇予告手当」が問題に



 運送会社A社の社長は、今年4月中旬頃に新しいドライバーを採用した。そのドライバーは出勤するたびに別のドライバーと喧嘩をし、取引先では作業員に横柄な態度で接してゴミを捨て、4日ほど働いたあとは大型連休が始まるまで無断欠勤を続けるなど、非常に劣悪な勤務態度を見せた。事業者は会社にとって悪影響な存在だと感じ、ドライバーが出勤をしてきた連休後の5月に解雇を言い渡したが、その後、そのドライバーは労働基準監督署に駆け込み、実労働時間が4日であったにもかかわらず給料を30万円払うことになった。
 

 このケースで問題とされたのが、解雇予告手当である。
 解雇予告手当とは、企業が従業員に対して解雇予告をせずに解雇した場合に支払いが義務付けられている金銭給付のことをいう。これは、従業員が突然の解雇により生活が困窮するのを避けるために労働基準法第20条で定められている。
 雇用者(会社)は、労働者を解雇する場合は少なくとも30日前に予告をしなければならず、30日前に予告をしなかった場合は30日以上の平均賃金を支払う必要がある。
 つまり、即日解雇をしてしまった場合は30日分の平均賃金を支払う義務が発生する。
 解雇予告をする場合は、該当する従業員に対して解雇理由を正確に伝えなければならない。解雇の予告は法律上では口頭で行っても問題ないとされているが、後のトラブルを避けるためにも書面で解雇の予告を行うことが一般的とされている。
 

 解雇は、勤務成績が著しく悪い場合などやむを得ない理由があるときに使用者が一方的に行う「普通解雇」、従業員が企業秩序を乱す行為を行ったときに使用者が一方的に行う「懲戒解雇」、事業悪化や倒産など企業の都合で行われる「整理解雇」の3つが存在する。
 今回のケースのように懲戒処分の性質を持ち、懲戒処分として最も重い制裁罰として解雇をする場合は、「解雇予告除外認定申請書」を提出することで、除外認定が受けられることもある。
 その場合、解雇する従業員の言動や関係者の通報など事実をもとに調査し、これらの事実が就業規則に明記してある「懲戒事由」に当てはまるか確認・検討する必要がでてくる。
 就業規則において懲戒事由に関するルールを定めていなかった場合は、トラブルに備えて今一度就業規則を見直すべきであろう。
 解雇予告をせず、解雇予告手当も未払いであった場合は労働基準法違反となり、労働基準法第119条により6か月以下の懲役または30万以下の罰金に科される可能性がある。 
また、従業員が解雇予告手当が支払われていないと裁判所に申し立てを行った場合は、労働基準法114条により付加金の支払いが認められることもある。


 労働基準監督署の担当者は、「即日解雇は労働者が最低守られなければならない日常の生活をおびやかすもの。最低基準を下回るような対応をされたと労働者が相談してきたら、事業者には当然、不払いとなっている解雇予告手当(30日分の平均賃金)を払ってもらうよう指導する。事業者の権利も守られなければならないものだとは思っているが、この場合はそれよりも立場が弱い労働者の生活の保障が優先される」と話す。