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タンクローリー運転手に禁錮2年 「ホワイトアウト」 25人死傷事故(2023/01/15)


光が乱反射する日中に多発


大型車の事故は普通車の13倍



 2021年1月、宮城県大崎市の東北自動車道で、雪が強風で巻き上げられて地吹雪が発生し、運転している車のすぐ目の前が見えなくなるほどの猛烈な地吹雪(「ホワイトアウト」)により、車61台が絡む大規模な事故が起き、1人が死亡、24人が負傷した。この事故で、大型タンクローリーを運転していた男性が自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われ、その公判が昨年11月18日、仙台地裁で開かれたが、判決では、タンクローリーの運転手が前方の車両の停止状況を具体的に予見することはできなかったとして、禁錮2年、執行猶予5年が言い渡された。

 起訴状によると、事故当時、東北自動車道では雪による時速50㎞の速度規制が出ていたが、タンクローリーは時速約80㎞で走行し、前方で停止していた乗用車に追突。衝撃でさらに前方の普通貨物車など3台が絡む玉突き事故が発生した。
「ホワイトアウト」による事故は、近年多く発生している。
 2022年2月、北海道北斗市の函館江差道でホワイトアウトが発生し、車が相次いで衝突。車両160台が立ち往生した。その際、車外に出ていた67歳の男性が、後ろから走ってきた乗用車にはねられ死亡した。
同年11月に乗用車を運転していた女性は、過失運転致死の疑いで書類送検された。また、この事故では他にも14人が過失運転致傷の疑いで書類送検されている。

 北海道警察本部交通部交通企画課が2021年にまとめた「吹雪など視界不良時における交通事故の実態」によると、道内で冬期に発生した「多重衝突事故」の原因を分析したところ、19・3%がホワイトアウトなどの「視界不良」によるものだった。
視界不良事故は1月から3月の厳冬期に多く発生し、発生件数は、この3か月間で全体の91・1%を占める。
 また、事故は7時から14時台までの日中に多く発生(全体の74・7%)しているが、これは太陽光が雪に当たると光が乱反射し、まぶしくて前が見えなくなるためだ。
視界不良事故は郊外の国道など、本来なら見通しの良いはずの直線道路で多く発生(全体の54・8%)している。事故の78・5%が停止中の車両への追突事故だった。
 また、視界不良事故の「車種別の事故の起こしやすさ」について調べた資料によると、10年間平均で、大型車は普通車の13・6倍も事故を起こしていることがわかった。
さらに、「視界不良事故で運転者が危険を認知した速度」は、普通車では時速30㎞以下が最も多かった(25・4%)のに対し、大型車では40㎞以下が最も多かった(31・3%)。
ホワイトアウトなどの「視界不良」は、強い風が吹いて、降っている雪と地面に積もった    
 雪が同時に舞い上がる、「地吹雪」という現象により発生する。
一見して、目線が高く視界の良い大型車の方が視界不良事故を起こさないように思われるが、逆に、大型車は前を走る普通車よりも減速のタイミングが遅れがちになり、追突事故を起こしやすい。
 視界不良事故で危険を認知した速度が、普通車より大型車の方が時速10㎞も速いことが、それを裏付けている。
 その上、ホワイトアウトが発生する状況下では、テールランプに雪が付着して見えにくくなるなど、追突事故を誘発する悪条件も重なる。

 国交省山形河川国道事務所の担当者は「雪道は夏場より多めに車間距離を取って、ゆっくり走ってほしい。ホワイトアウトが発生したら、あわてずにハザードランプをつけ、スピードを落とす。急ブレーキをかけるとスリップして、他の車を巻き込んだ大事故につながるので絶対にやめてほしい」
 また、「雪道では、同じ距離を行き来するのにも、普段より時間がかかる。タイヤチェーン、スコップ、(タイヤがスリップして走れなくなった時に使う)スタックラダーなどの雪道対策はもちろん、あらかじめ燃料を満タンにしておくことも忘れないでほしい」と注意を促す。(1月16日号)

 【写真】2021年1月宮城県大崎市の東北自動車道で猛吹雪のため起きた多重衝突事故 東北地方整備局提供