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中小の運賃値上げにつながるか? 大手の相次ぐ運賃値上げ(2023/04/23)
大手運送会社が運賃を相次いで値上げしている。佐川急便は宅配の運賃を4月から約8%値上げし、ヤマト運輸も、4月から宅配運賃を約10%の値上げに踏み切った。福山通運も4月以降、積み合わせ運賃(特積)を約10%値上げし、個人の宅配運賃も約2%値上げする。大手の運賃の値上げの動きは中小の運送会社にも波及するのだろうか。
ここ数年、トラックの運賃はどれだけ動いているのだろうか。日通総研のシニアアナリスト峰猛氏は次の2つの指数から運賃の全般的な動向をみることはできるとする。
「1つ目の指標は、日本銀行が毎月発表している『企業向けサービス価格指数』。これは日銀が作成・公表している物価関連統計の一つ。この『企業向けサービス価格指数』の中に、トラックの運賃料金を対象とした『道路貨物輸送』の項目があるが、これをみると、大幅な変動は見られないものの運賃は少しずつ上昇している。この指数の動きをみる限り、長期運送契約の運賃は緩やかに上昇しているといえる。(2015年を100としたときに2022年が11・6%増)
2つ目の指数は、全ト協と日貨協連が2010年から公表している『WebKIT成約運賃指数』。WebKITは、日貨協連が運営している求荷求車システムだが、成約運賃指数とは、成約した運賃の合計を成約件数で割り算したもの。大雑把にいえば、トラック調達のスポット価格の動向を示す。この指数の推移を見ると、季節波動により月毎の変動はみられるが、運賃は2012年頃から上昇傾向となっている。(2012年2月時の成約運賃指数106に対し、2023年2月時は123)」
大手の相次ぐ運賃値上げは中小の運送会社にどのように影響を与えているのだろうか。
大阪の一般貨物運送A社の社長は「大手(路線便)の運賃が上がれば、チャーター(一般貨物)の方でも値上げ交渉はしやすくなる。大手の値上げは、我々中小にとってもプラスに働くと思う。こうした動きは、元請けが下請けを、これ以上買い叩くことができなくなったということの現れ。運賃の値上げ交渉に出向いた先で『なんで今まで言わなかったの?』と言われることもあり、流れが良い方へ変わりつつあるようにも思える」と話す。
福岡の長距離運送B社の副社長は「2024年以降、運送会社の淘汰が進めば、業者数が減り、とくに長距離の仕事は売り手市場になると考えている。安い運賃で仕事を請け負う業者もいるが、会社の体力を消耗させながら仕事を続け、今後生き残っていけるかどうかは疑問。2024年問題に理解のない荷主さんも一部いるが、今回の大手の運賃値上げは、そうした強硬な荷主に現状を知ってもらえる良い機会だ」と話す。
大阪の一般貨物運送F社の部長は、「大手の運賃値上げの動きは、うちが値上げ交渉する際に、具体例として示すことができる。中小運送会社の名前を出して、『あそこも値上げしています』と言っても、『でも、おたくは大丈夫でしょう』『無理なら他の安いところを探します』と切り返されるが、『佐川やヤマトのような体力がある会社ですら値上げしているんですよ』と言うと説得力が違う」と話す。
ある物流コンサルタントは次のように指摘する。
「今回の値上げ対象は宅配領域に限られる。宅配は、ヤマト、佐川、日本郵便の3社による寡占市場で、運送会社側に、ある程度の価格主導権はあるものの、現在、宅配市場は個人ではなく『BtoC』と呼ばれる、企業が発送する通販(EC)の貨物が大半を占める。このBtoCの宅配領域は、大手の通販会社が強い価格交渉力を持っており、その結果、運送会社が定めた運賃とは大きくかい離した、大幅に安い運賃がまかり通っている。
一般貨物の領域では、多くの中小運送会社が激しい競争を繰り広げており、特定の運送会社が値上げの主導権を発揮するのは難しい。宅配は運送全体の1~2割程度を占めるに過ぎず、大手の宅配運賃値上げが、そのまま運送会社全体の運賃底上げにつながるかどうかは、まだ不透明だと言わざるを得ない」(4月17日号)