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「アスリート採用制度」で11名が入社 神奈川・大松運輸(2023/09/25)
働きぶり評価、現場から指名も
住宅建材などの運送を手掛ける㈱大松運輸(仲松秀樹社長、神奈川県横浜市、80台、113名)は、2019年に「アスリート採用制度」を導入した。2024年問題や人手不足の対策として、元サッカー選手の社員が提案したもの。
アスリート採用を提案した赤沼平課長は、FC琉球に所属していた元プロサッカー選手。赤沼氏自身も、FC琉球に入団した当初は働きながらサッカーをしていた。当時の自分のように、大学卒業後も働きながら競技を続けたい社会人アスリートが多いことから、仲松社長に自身の経験を伝えて提案した。
2019年度は、人材紹介会社の協力でアスリート3名が入社した。当初、社内では「そんなところにお金を使わないで、一般ドライバーの給与を上げればいいのではないか」といった声もあり、後ろ指をさされることもあったという。
入社したアスリートたちは、仕事もしっかりしなければ競技を続けていけないことを理解しているので、仕事が迅速かつ丁寧で、制度開始から4年たった今では、現場から「あいさつが気持ちいいし、てきぱき動いてくれる」と、アスリート社員を指名されることも少なくなく、アスリート社員がいないと会社が回らないという。
8月現在、大松運輸には20歳代中心に11名のアスリート社員が在籍し、競技別では陸上8名、サッカー1名、また、時短勤務の傍(かたわ)ら出身中学のバスケ部で指導する社員と、マッサージ士の専門学校に通いながら働く社員がいる。
同社のアスリート契約には、3種類ある。①大手のような広告塔(現在該当者なし)、②競技費用月5万円を支給し、大会出場は有給、有休消化後もみなし出勤扱い(全国大会レベルの陸上選手6名在籍)、③競技費用の支給はないが、8時出勤で必ず定時退勤(5名在籍)。
契約②に該当する選手たちは、普通免許しか持っていないので軽トラックで主に風呂のリフォーム建材を配送する。朝6時ごろ集合し、8時に現場へ届けて、そのまま会社の車で練習場に向かい、練習後は会社に帰る。
会社側は、練習時間を確保できるよう、なるべく練習場に近い現場になるよう配慮する。社内には、トレーニングルームも設置している。
仕事のスケジュールなどは、赤沼課長が一人ひとりの声を聞いて、両立できるようサポートしている。赤沼課長は大会エントリーなどの手続きも行い、ホテルの手配を手伝うこともある。
アスリート社員たちからは、他社のアスリート採用では金銭面の支援以外は全て自分でしなければいけないが、大松運輸では会社と選手の間に赤沼課長がいて、それぞれの要望を聞くので心強い、といった声が聞かれるという。
同社の喜田奈南子選手(25)は、今年の神奈川県選手権女子100mと200mで優勝した。200mでは、オリンピック予選となる日本選手権の標準記録をクリアしたことから、来年の日本選手権出場に向けて挑戦を続ける。
また、今年4月から、陸上選手の一人が横浜市内の中学で部活動の指導も行う。ほぼ現役の選手が指導することで、地域貢献や教員の負担軽減など社会問題の解決につながり、地域の方々に運送会社をより身近に感じてもらえる機会にもなる。同社では、今後もこのような活動をする選手を増やしていきたいという。
採用には、SNSを活用する。アスリート社員たちは、X(旧ツイッター)アカウントを持ち、練習風景や大会、試合の結果などを発信し、仕事と競技を両立したいアスリートたちからメッセージが届く。(「#アスリート採用 #陸上」で検索すると、大松運輸のサイトが1ページ目に登場)
赤沼課長は、「アスリート採用に関しては広告費用ゼロで、大松運輸のサイトと、私やアスリート社員のツイートのみで行なっています。引退後もセカンドキャリアとして、大松運輸で働き続けてくれることを目指しています」と話している。(9月18日号)
【写真】仲松社長(前列左)、喜田選手(前列右)、赤沼課長(後列左端)とアスリート社員たち