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原因は長時間労働ではない? トラック運転手の過労死(2023/11/26)


偏食、運動不足を指摘する声


 厚生労働省発表の「令和4年度・過労死等の労災補償状況」によると、過労死に関する労災請求件数のうち、脳・心臓疾患に関する請求件数は803件で、その内訳は、「運輸・郵便業」が172件で最も多い。脳・心臓疾患に関する過労死で「運輸・郵便業」がワースト1という傾向は過去10年以上継続しており、それはトラック運転手の長時間労働が主な原因として挙げられている。しかし、「過労死は長時間労働が直接の原因ではない」とする声も実はよく聞かれることだ。


 栄養面に明るいある運送会社社長はこう話す。
「トラックが長時間労働とは言うが、荷物や形態にもよるが、実際のところ、重労働ではない。うちの場合、一日の拘束時間13時間のうち実際に体を動かす労働は3時間程度。あとは運転と待機時間。運転は肉体労働に入らない。『ドライブ感覚』で運転する者もいる。待機も実質、休憩のようなもので、体力的に負荷がかからない」
 では、何が過労死の原因となっているのかについは、「偏食、運動不足」と指摘する。
「ドライバーの食生活が悪影響を及ぼしている。ドライバーは仕事上、外食するケースが多くなるが、昼食はコンビニでカップ麺にから揚げ弁当。休憩時には甘い缶コーヒー。おやつは買い放題。これでは、糖に油、塩分を過剰に摂取することになり、体に支障を来すのは火を見るより明らか」と話す。
 さらに、「運動不足。運動をしない。水分を摂らずに、長時間運転席に座り続けていると、『エコノミークラス症候群』になり、血がドロドロになって、血栓ができやすくなる。脳・心臓疾患に陥る可能性は高くなる」と話している。


 要は、もともと栄養が偏っている状態にあるドライバーが、「長時間労働」と重なり過労死認定されている可能性があるとする解釈だ。
 米国心臓学会は、「米国健康・栄養調査」と「国連食糧農業機関」に保管されている医療と生活習慣に関する調査データ(過去20年分)をもとに、人間の栄養状態と心臓疾患の関連について分析を行っている(2020年発表)。
その結果、健康的な食品を摂取していない人は心臓病や心血管疾患などのリスクが上昇することが判明。アメリカ国内で不健康な食事が原因で心臓病や心血管疾患や糖尿病を発症して死亡する人は、年間約40万人に上ると報告している。
心臓学会は、健康的な食事を取る上で勧められない食品として、トランス脂肪酸が多く含まれる食品、加工された赤身肉、短時間での栄養補給を目的とした高カロリーで糖分の多い食品や菓子、エナジードリンクなどを挙げている。


 また、「早食い」も体に悪い影響を及ぼすとの報告もある。大阪健康安全基盤研究所では、早食いの人が、肥満になりやすいだけではなく、心血管疾患のリスクも高まるとしている。
 同研究所では、「早食いをすると血管内で酸素がうまく回らず、血流障害を起こす。血管内の酸素が不足する状態は、高血圧の血管と同じ状態で、『血管内皮障害』を引き起こし、動脈硬化のリスクも高まる。つまり、早食いは心臓疾患も誘発する」と説明している。
「2024年問題」のそもそもの発端は、トラックドライバーの長時間労働による過労死が多いこととされているが、労働時間の面だけでなく、「食」の面からもトラックドライバーをサポートする必要性があると考えられる。(11月20日号)