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10年地道に続け実を結ぶ 埼玉・新郷運輸 健康経営(2024/02/28)
独自に「経年比較表」の作成
㈲新郷運輸(赤城義隆社長、埼玉県川口市)では「健康経営」に積極的に取り組んでいるが、同社は独自の「経年比較表」の作成をはじめとした健康に関する様々な取り組みが評価され、埼玉県の運輸業者で唯一「健康経営優良法人2023ブライト500」の認定を受けている。
同社が健康経営に取り組むようになったのは人材確保のためだった。人手不足の状態が続いていたが、「新しく人が入ってこないなら、今いる社員に長く働いてもらおう」という目的で健康経営の取り組みを始めた。
だが最初から順風満帆だったわけではない。健康経営を志した当初は、社員に年1回の健康診断を受診させるのにも苦労したという。そんな中、社員の一人が脳(のう)梗塞(こうそく)で倒れ、現場に復帰できなくなる事態が起こった。赤城社長は二度とこんなことを起こしてはならないと決心。健康経営にさらに力を入れ始めた。
赤城社長の奥さんで、健康推進室長でもある伸子氏も健康経営の取り組みをサポートした。伸子氏は「健康診断の結果の見方が分からない」という人は多い」と感じたことから、社員一人一人に向けて、健診結果を踏まえた手紙を個別に書いていった。
それでもなかなか受け入れてもらえず、時には目の前で手紙をシュレッダーにかけられたこともあったという。
それでも諦めず、10年の歳月をかけて粘り強く社員に働きかけ続け、社内の意識を変えていった。「総務担当者に丸投げしない。社長が本気にならないと駄目」と赤城社長は話す。
健康診断の実施とともに、独自の取り組みとして行っているのが「経年比較表」の作成である。これは社員一人一人、入社時から現在までの健診結果の数値をまとめた表で、過去のデータや数値の推移を一目で確認することができる。
面談で社員の健康状態を把握するのに使われている。
同社は他にも、55歳以上の社員全員や希望者を対象に脳MRI検査、心臓エコー検査、けい動脈エコー検査の3つを会社負担で行う「プラチナ健診」を実施。
また、3か月に1度、独自の健康情報誌「KOTONOHA」発行し、全員に配布している。ここでは健康情報の発信や健康管理において模範的な社員の紹介記事などを掲載している。
健康診断の結果がかんばしくない社員に対しては、赤城社長や伸子室長が個別に面談を行っている。医療機関への再検査を促すほか、社員に合わせた資料を準備し、検診結果についてわかりやすく説明を行う。
赤城社長が健康経営に力を入れて一番嬉しかったことは、MRI検査を実施した際に社員の家族から直接電話で感謝されたことだという。
赤城社長は「うちには元気いっぱいに働く73歳の社員がいて、よく冗談で『(健康なら)死ぬまで働いていいよ』って伝えている。何歳でもそうやって健康に働いてもらえるのは本当に嬉しいし、彼もとても幸せそうに仕事をしてくれている。それに健康じゃないといくらお金あっても人生面白くないしね」と話していた。(2月19日号)
【写真】左 健診結果のフォロー面談の様子 右側は伸子室長
右 会社の冷蔵庫には社員用の野菜ジュースが常備されている