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休憩増やし「960時間」クリア?(2024/03/20)
一部の運送会社で就業規則改正の動き
今年4月以降、運送会社の時間外労働について、月80時間・年960時間の上限が適用される。「実際問題、守っていくのは難しい」とする声は少なくないが、そんな中、運送会社の中には、就業規則を改正し、運転手に従来よりも長い休憩時間を与え、その分、残業時間を圧縮しているところが出てきているという。
例えば、運転手の拘束時間が1日12時間とすると、通常は、法定労働時間8時間、休憩1時間、時間外労働時間(残業)3時間になる。しかし、ある運送会社は、これを、法定労働時間8時間、休憩2時間、残業2時間とし、残業時間を短くしているという。
労働者の休憩時間は、労働基準法で次のように定められている。
「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、労働時間が8時間を超える場合は少なくとも60分を労働時間の途中に与えなければならない」
休憩時間については「少なくとも」とあり、下限は決められているが、上限については触れられていない。
会社側にとっては残業代の支払いの削減になることも考えられるが、場合によっては、労働時間8時間、休憩4時間、残業0という時間配分も考えられる。
そんなことは可能であるのか。
運送業の労務管理に詳しい㈱ティーラック(大阪市)の石川亮社長は、「休憩時間に上限はなく、運転手さんに長く休憩を取らせたからといって、基本的に法律で罰せられることはない。私が知っている運送会社では、拘束時間15時間、休憩時間が5時間というケースもあった」と話す。
その一方で、「現実の業務では『休憩時間が長くなる=拘束時間が延びる』ことになり、残業時間を減らす目的で休憩時間を増やすのは、労務管理上、得策とは言えない」とも指摘する。
まさる労務管理事務所(大阪府岸和田市)の木田慶典社会保険労務士は、「休憩が長くなるということは、その分、運転手の手取りが減るということ。休憩時間を延ばすことで残業時間を減らせても、それが後々、未払い残業代訴訟の火種になるのでは意味がない。休憩時間の延長を行う際は、労使双方が休憩時間をこまめに確認し合うなど、訴訟リスクを前提に取り組むようにしたい」とアドバイスする。
北大阪労働基準監督署の担当者の話
「休憩時間を多くとり、その分実労働時間を減らすことは違法ではないが、きちんとした休憩の実態が伴わないケースは当然取り締まりの対象となる。管理者はこうした点を踏まえて適切な休憩時間を設けて欲しい」(3月18日号)