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航空便と新幹線便に脚光 2024年問題受け(2024/04/17)


航空輸送は毎年14~18%伸び


 JR東日本は北陸新幹線を活用した列車荷物輸送サービス「はこビュン」について、3月22日から敦賀駅(福井県)からのサービスを開始した。同社は、金沢駅、富山駅発の列車を対象に「はこビュン」を実施してきたが、北陸新幹線敦賀駅開業に伴い、敦賀駅からの荷物輸送を始めた。

 4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制がスタートした。この規制により、トラックの1日あたりの走行距離も制限され、長距離輸送が立ち行かなくなくなるのでは、と懸念されている。
 「翌日配達」が当たり前になっている宅配便も例外ではないが、そんな中、航空機や新幹線を使った物流サービスが注目され始めている。
 ヤマト運輸は4月からJALと共同で国内向けの貨物専用航空機の運航をスタートさせた。東京―九州、東京―北海道、沖縄―九州など国内4路線に3機の貨物専用機が導入され、1日21便体制の運行が行われる。事業が軌道に乗れば、法人向けの荷物も輸送する。
 また、新幹線を使った運送大手の宅配としては、佐川急便が九州新幹線を使い福岡―鹿児島間で行っている「はやっ!便」など、これまで様々な「新幹線便」が存在していたが、4月以降はJR東海(JR東海物流㈱)の「東海道マッハ便」(東京―大阪)など、運送大手以外の企業も新幹線便に参入する予定だ。

 総務省統計局がまとめている「輸送機関別輸送量(令和4年度)」によると、国内貨物輸送に占めるトラックの割合が91%であるのに対し、新幹線を含む鉄道貨物輸送の割合は1%、航空貨物輸送は0・02%と少ない。
 ただ、ここ数年、トラックと鉄道の輸送量は横ばいなのに対し、航空輸送は毎年14~18%伸びている。
 国土交通省がまとめている「空港管理状況調書(令和4年)」によれば、現在、日本には97箇所の空港があり、羽田や福岡など「拠点空港」と言われる利便性の高い空港は、路線数や便数が増加傾向にある。福岡空港では2025年に2本目の滑走路が稼働する予定だ。
 日本酒の海外輸出業務を手掛けた経験もあり、航空輸送にも詳しい運送会社の社長は次のように話す。
「大手の運送会社やメーカーが航空輸送に注目していることもあり、今後、宅配便の一部、とくに遠隔地向けの荷物は航空輸送化されていくと思う。現状、国内の航空便は、薬やワインなど高価で迅速な配達を求められる品物がメインになっているが、貨物専用機が運行されるようになれば、海上コンテナのように荷物を簡単にハンドリング(積み合わせ)できるようになり、輸送単価は下がる。
 また、ほとんどの地方空港は郊外にあるため、大型の物流施設を空港の近くに建設することができ、空港を宅配の中継拠点として活用することも可能になる。旅客では赤字の地方空港も、貨物でなら黒字化できるかもしれない」

 その一方で同社長は「地方空港は航空機の発着枠に余裕があるが、年始に羽田で起きた航空機衝突炎上事故でもわかる通り、大都市近郊の空港は超過密状態で、羽田や福岡のような需要の多い空港に貨物輸送の入り込む余地があるのかは微妙なところだ。
現状、トラックの路線便が運んでいる宅配便をすべて航空便に置き換えるのは難しいのではないか」とも指摘する。
 ある交通ジャーナリストは「東北や能登半島で大地震が発生した際も、新幹線はすぐに運転を再開している。もともと航空機や新幹線は災害に強い輸送機関でもある。従って、これらに貨物輸送の一部をシフトすることは、大規模災害対策にもつながる」と話す。(4月15日号)


 【写真】約600箱の荷物を時速360キロで輸送するJR東日本の「はこビュン」