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トラックのネームプレート外す動き (2024/06/30)


個人情報漏えい防止目的


 トラックの後部ドアに運転している運転手の名前をプレートにして掲示させている運送会社がある。プレート表記については本来、安全運転や交通違反や荷物を大切に扱うために意識向上を図る目的で行われているが、昨今このプレートを外す動きが出てきている。

 ネームプレートは、顧客からのクレームや運転上トラブルが発生した場合、特定ができ、連絡が可能なことからトラブル対策に効力があるが、法律で定められたものではない。
 プレート外しの動きは2022年4月の改正個人情報保護法も影響している可能性がある。これまで個人情報の漏えい等が発生しても、報告や本人への通知は努力義務だったが、改正により、「漏えい等が生じた際は、原則、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務」となっている。
 元来法律が定義する個人情報は氏名・生年月日その他の記述で特定の個人を識別できるものを指す。ネームプレート自体は氏名のみであることからこれだけでは個人情報には当たらない。
 ただし、特定の人を識別できなくても会社名やナンバープレートなど他の情報と照合することで識別が可能なため、敏感になっている経営者が多いようだ。
トラックは交通違反や危険運転は禁物だ。ドイブレコーダーの普及も相まってSNS拡散による炎上は会社の信用を大きく損ねる。名前と顔写真で簡単に本人を特定できるインターネット社会では廃止せざると考える企業も多いようだ。 

 物流大手の佐川急便は、この春から順次ネームプレートを廃止していっている。個人情報保護のため、「氏名欄」を営業所表記に変更し、運転手が安心して働ける環境作りに努める」と話す。 
食品物流を手掛けるアサヒロジスティクス㈱(さいたま市)も4月から車両へのネームプレートの取り付けを廃止するとともに、ユニホームに取り付ける名札の表記についても、名字のみでひらがな表記に変更した。
 山形陸運㈱(山形市)では、昨年4月にネームプレートを廃止している。人材の確保でもマイナス要素があることから決断したという。
 国土交通省は、タクシーやバス路線において、名前と顔写真が表示された「運転者証」の掲示義務を昨年8月に廃止した。昨今、運転手の対応への不満などを理由に乗客が「運転者証」をスマートフォンで撮影しネット上で掲載する事例が多発しているのが理由。
運転手が安心して働ける環境を整備しドライバー不足の解決の一助にもとしたい考えだ。現在、運転手に割り振られた番号を記載し、忘れ物があった場合などは番号や領収書から乗車車両を確認できる対応をとっているところが増えている。

 物流の求人を取り扱う会社では、「時間外労働制限やドライバー不足が課題となる中、若手ドライバーが安心して働く環境を整えることが重要。また女性ドライバーのストーカーやいやがらせ防止対策としてプレート廃止は増えていくのでは」と話す。(7月1日号)

【写真】ネームプレートが外されたトラック