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「輸送力不足14・2%」は本当か  2024年問題の根拠(2024/10/06)


NX総合研究所発表データ

実態は1・2~2%の不足?


 2024年問題により輸送力が14・2%不足する」ーーNX総合研究所が2022年11月に発表したこの試算データは、2024年問題の周知や物流の改革を行う上での根拠として活用されている。しかし、この試算に対し、疑問を持つ声が挙がっている。

 この試算はNX総研が、「第3回持続可能な物流の実現に向けた検討会」で配付した資料に記載されたもの。今年4月から改善基準告示の改正でドライバーの拘束時間の上限が原則3300時間となったことで、どれだけの輸送力不足につながるかを試算したもの。
 物流革新に向けた政策パッケージ」や「物流革新緊急パッケージ」にもこの試算が根拠として記載されており、現行の2024年問題の深刻さを訴えるとともに、対策を推進する根拠の一つとなっている。
 そもそもこの14・2%という数値はどのようにして算出されたものなのか?
 NX総研の資料では、3300時間を超過する時間の合計を年間3547万7054時間と算出し、これを年間労働日数(250日)で割ることで「最大補充必要人員数」(=不足する輸送能力)を試算。この「最大補充必要人員数」(14万1908人)と2019年のドライバー数86万人から不足する輸送力を割り出した。
 ここで疑問視されるのが最大補充必要人員数の試算方法だ。

 超過時間の合計を労働日数で割る形で算出するこの試算方法では、補充される人員の年間拘束時間は250日=250時間となる。つまり1日1時間しか働かないドライバーということになる。
 超過時間から不足する人員数を単純計算するのであれば、年間拘束時間である3300時間、もしくは年間労働日数×8時間の2000時間で計算するのが妥当と考えられる。
 仮に3300時間で試算を行った場合、補充人員数は1万751人で、約1・2%、2000時間の場合は1万7739人で約2%の不足となる。
 また、多くの運送会社は労使協定を結んでおり、労使協定を結んだ事業者であれば年間拘束時間を3400時間に延長することができる。資料では3400時間を基準とした試算も記載されており、超過時間の合計が1259万510時間、最大補充必要人員数は5万362人、不足する輸送力は約5・5%となる。
 このことについてNX総研にうかがったところ、「輸送の現場では、ある輸送を切り分けたり、複数のドライバーで分担して担当することは決して簡単ではない。例えば、同じ事業所で2人のドライバーが各4時間ずつ超過しているとして、これを1人にカバーさせるという想定をするのは難しい。
 1日1時間ではなく8時間で試算する考えもあったが、物流現場でドライバーを配置・管理する人から『ドライバー数が少ない事業者や営業所等では、1日1時間でも足りなければ1人補充してでもこなそうとする』との意見があった。 
 なので、1日に1時間でもオーバーすると、1人補充人員が必要という想定で試算を行い、それを最大補充必要人員数とした。この試算は、経産省や国交省とも議論・検討の結果のもの」と回答があった。

 物流コンサル会社・㈱フリーロケーションの寺内石一氏は、「配送現場では様々な条件の仕事が組み合わさっており、拘束時間の不足分に対してピッタリと人員補充するのは難しいことは理解できる。だが最大値と言えども、この試算はあまりにも非現実的。1人1日1時間不足する状況で、そのためだけに1人を補充する運送会社はまずないと思う。仮に1人採用したとしても、その余力で他の仕事を取りに行くので、供給量は数倍に増える。せめて1日4時間で計算するなどのやりようはあったのでは」と指摘する。(10月7日号)

【写真】「2024年問題」で日通総研が試算した不足する輸送能力(2019年度対比)