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「事故が起きるのは時間の問題だ」 増加する電動キックボード (2024/12/01)


「事故になるとトラックの過失に」の声も

 昨年7月1日から電動キックボード免許無しでも乗ることが可能となった。手軽な移動手段として注目を浴びる反面、交通ルールを守らない利用者の増加も問題視されており、トラック運送会社からも「いつ巻き込んでしまうかも知れない」と懸念する声が聞かれる。

 電動キックボードは「特定小型原動機付き自転車」に分類され、16歳以上であれば運転免許無しで運転できる。昨年7月1日の道路交通法改正で、解禁されたこの乗り物は環境対策やラストワンマイルの移動において期待が寄せられており、解禁以降、レンタルサービスをはじめ、利用者数は増加し続けている。
 JEMPA(一般社団法人日本電動モビリティ推進協会)が公開している販売台数の推移によると、電動キックボードの販売台数は毎年増加しており、2023年は7430台。
 また、電動キックボードのシェアサービスを展開する㈱Luup(東京都)は今年6月時点で東京・大阪・横浜・京都・宇都宮・神戸・名古屋・広島・仙台・福岡の10エリアで事業を展開しており、ポート数は8200箇所、電動キックボードと電動アシスト自転車を合わせ約2万台提供。2025年までに3万台まで増やすとしている。
 そんな中、問題視されるのが、道交法を違反する利用者の存在だ。利用者の多い東京や大阪の都市圏では、2人乗りや信号無視、割り込み、ながら運転など違反運転を平然と行う利用者が多数見られる。
 
 警察庁が公開している特定小型原付の違反件数の集計によると、昨年7月から今年の8月末までで、違反件数が3万3518件にも上る。最も多いのが車線無視などの通行区分違反で1万8954件(57%)、次いで信号無視で9511件(28%)。今年に限定すると8月末までで既に2万6388件と急激に増加している。
 また、当然、事故の発生件数も増えている。昨年7月から今年の8月末までで289件。今年の事故件数は204件で、8月には沖縄県で特定小型原付に乗っていた旅行客の男性が転倒し死亡する事故も発生し、国内で初めての死亡事故となった。
 特筆すべきは、事故事例における飲酒事故の割合の多さだ。今年の上半期に発生した事故のうち、17%の運転者が飲酒運転を行っていた。自転車や原付の飲酒事故の割合は1%で、特定小型原付の飲酒運転が非常に多いことがうかがえる。
 運送会社の間では、電動キックボードを危険視する声が挙がっている。
 ある運送会社の経営者は名古屋を訪れた際、歩道を平然と走行する利用者やビールを片手に運転する利用者、信号無視でタクシーにひかれかけた利用者を目撃したという。
その経営者は、「利用者にはファッション感覚で乗っている人が多いと感じる。自分だけが良ければいいという人ばかりだ。トラックが巻き込んで事故が起きるのは時間の問題だ」と憤りを見せていた。

 トラックはキックボードとの事故を回避するためにはどうするべきなのか?
事故防止コンサルタント・セーフティ・サポートの渡辺良祐代表は、「キックボードについては、こちらが安全に運転していても、相手側が不安全な運転をしているという印象。こういった相手への対処は『近づかない』ことが一番。十二分なスペースが確保できない場所であれば、追い抜きせずに後ろに控えていた方がいい。あんなに小さな車輪だと、小石を踏むだけでも転倒のリスクがある。個人的には自転車よりも危険な乗り物だと解釈している。目の前で転ばれると、トラックでは急停止できずにひいてしまう。相手がいくら悪質な運転をしていても、事故になるとトラック側の過失になってしまうのが現状だ」と話す。(12月2日号)

【写真】逆走しているキックボード 大阪市内で