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SNS活用で債務超過から脱出  天人急配・西村取締役(2024/12/22)


SNS活用セミナー

社員とのコミュニケーションツールにも

 トラック情報社は11月11日、天人(てんと)急配㈱(大阪府門真市)の西村祥子取締役を招き、「TikTok・インスタ・FB SNS活用セミナー」を開催した。小型車で運送会社を営む同社は、債務超過に陥ったが、社員とのコミュニケーションを深めることで離職率を改善し、SNSを活用して採用で成果を上げ、業績を改善してきたことを落ち着いた語り口で紹介した。

                  ※          ※         ※

 弊社は、2009年2月に設立され、今年で16期目を迎えます。ドライバー13名、事務員2名、役員3名の体制でやっています。73歳の父が代表取締役で母が専務、私が取締役を務めています。来年、私が代表取締役に就任する予定で、ここ数年は事業承継の準備をしていました。
 私は、美容業で勤務していた時代は、コミュニケーションをとるのがとても苦手で、お客さんからの指名の少ないネイリストでした。指名をたくさんとりたいという思いで経営学や心理学を学んだことから結果が出るようになり、夢だった独立を果たしました。
さらに集客のことなどを勉強し、数か月先まで予約がとれないサロンに成長しました。
 この時の学びが、現在の運送業での成果につながってます。

 三人兄弟の一番上で、二人の弟は、それぞれやりたいことに取り組んでいるので、会社の跡継ぎがいない状態でした。会社は、労務トラブルや事故など相次ぐトラブルに時間と労力をとられ、荷主の契約解除などで売上が激減してました。さらに2020年のコロナの影響で大きな赤字を出しました。10~20歳代、親に迷惑をかけてきた私は、会社を黒字化して親孝行したいという思いで運送業を継ぐことを決め、2021年に入社しました。
 債務超過に陥っていた当時の弊社は、業務の仕組み化ができてなくて、不要なコストや労力を使っている状態でした。
 評価基準が決まっていなく、従業員一人一人の評価ができていないため、従業員のモチベーションは低く、新しい人が入社してもすぐ辞めるという繰り返しでした。
また、突然入ってきたトラックに乗ったこともない社長の娘の話を、ドライバーはすんなりとは聞いてくれませんでした。
 なので会社の立て直しには、まず信頼関係を築いていくことが必要だと考えました。

 人間は承認欲求が強く、誰もが他の人に話を聞いてもらい、認めてもらい、褒めてもらい、理解され、気にかけてもらいたいと思っています。そういった欲求を満たしてあげると、こちらの話がすうっと入ってきます。
 こういう心理学の考え方をベースに、従業員に会社の話を聞いてもらって、協力してもらうためにまず従業員の話を聞き、心をつかむことから始めました。
 従業員の気がついていない「盲点の窓」を日々の会話から見つけ出して、ひたすら承認しほめました。また、会社にとって「秘密の窓」になっている部分をどんどん言語化して伝えていきました。
 そうしたところ、従業員それぞれの能力が上がって会社にどんどん協力的になってくれて、大幅に離職率が低下し、多数の求人問い合わせをもらえるようになりました。その結果、売上、利益ともに増加し、債務超過から脱出することができました。
何よりうれしいのが、従業員から「この会社に入ってよかった」「今まで勤めた会社の中で一番」などの声を聞けるようになったことです。
 私は同時に従業員とのコミュニケーションに主にTikTok、インスタグラム、フェイスブックの三つのSNSにも取り組んでいて、インスタのリールというショート動画で従業員との日々のやりとりを発信して何十万回と再生され、認知を拡大できました。

 また、SNS経由の求人問い合わせが増え、「リール見たよ」と声をかけられ、その流れで仕事をいただくということが起こっています。
 さらに、お客さんからも初対面の人から「(SNSを)いつも見ています」と言われ、認知と信頼を獲得している状態からスムーズにお話を進めることができます。
 SNSで望ましい投稿をするには、目的に合った発信スタイルを考えて、その発信スタイルに合ったコンテンツを選ぶことが大事です。
 私はインスタグラムのアカウントを作成するために、誰のために情報を届けるのか、どんな情報を届けるのか、どんな価値を感じてもらうのか、ということを考えながらコンセプトをきめ細かくつくり込みました。
 求人広告に多くの予算を割ける会社ばかりではないと思います。何十万円という広告費をかけても、質のいいドライバーが集まるかどうかも分かりません。
 SNSを活用することで、無料や少ない予算で自社の強みなどを継続して発信し、自分の会社に興味を持ってくれるドライバーさんとつながることができます。掲載期間が終了したら終わりではなく、会社の資産として残り続け、育てれば育てるほど資産価値を上げることができ、大企業と対等に勝負ができます。これからの時代に生き残っていくためにSNSは必須だと言えます。(12月16日号)

【写真】講演する西村取締役