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団体協約で最低運賃は可能 協同組合が取引先と条件を取り決め(2025/01/05)


独禁法の適用除外

 昨年、トラック輸送における取引環境・労働時間改善大阪府地方協議会で、大阪府中小企業団体中央会から、「団体協約の価格転嫁交渉」について報告が行われた。これは、取引先との価格交渉について、協同組合が取引先と「団体協約」を結ぶことによって、取引条件を決めるというもの。「納入する製品やサービスの最低価格」を取り決めることができ、「最低運賃」も決めることもできる。

 団体協約とは、中小企業等協同組合法(中協法)に基づき、協同組合が相手事業者との間で結ぶ、取引条件に関する取り決めを指す。組合は、組合員の取引先事業者と取引条件について団体交渉を行い、団体協約を締結することができる。
 通常、経済的地位の低い中小企業側は、取引先事業者との力関係から不利な取引内容を飲まされることが多い。団体協約はそういった問題に対し、中小企業が団結して経済的地位の改善を図り、対等な立場で交渉するための手段になる。
 団体協約は事業協同組合、事業協同⼩組合、協同組合連合会が締結することができる。団体協約で締結された取引条件は、組合員と団体協約を締結した事業者との間の個別の契約に適用される。
 仮に団体協約を締結した事業者が、組合員に対して団体協約よりも安い運賃を提示しても、団体協約で取り決められた運賃が優先される。

 団体協約は独占禁止法の適用が除外される。これは独占禁止法が、「単独では大企業に対抗できない中小事業者によって設立された組合は、独立性をある程度確保したまま事業活動を行うこと」を認めているためだ。団体協約を締結するためには、定款で定める事業内容に「団体協約の締結」についての記載がある必要がある。
 中協法施行令第7条によると、団体協約を締結するためには、まず組合の代表者が交渉開始の3日前までに、交渉事項を記載した書面を送付して申し出なければならない。交渉担当者の数は、5人以内に制限される。
 また、中協法第9条では、組合の組合員と取引関係がある事業者(小規模の事業者を除く)は、その取引条件について、組合の代表者が団体協約を締結するため交渉をしたい旨を申し出たときは、誠意をもってその交渉に応じる義務があるとしている。
 相手が交渉に応じない場合、行政庁に対してあっせん又は調停を申請することができる。この他にも、締結時に満たさなければならない要件があり、1つ目は、団体協約であることを明記した書面による締結であること。2つ目は、団体協約の内容について、事前に組合の総会での承認がされていることで、締結のためには、あらかじめ組合員の意見を集約しておくことが重要となる。

 このように、交渉において有効な手段と言える団体協約だが、実際にどれだけ活用されているかは把握できておらず、経産省が実態を調査している最中だ。
全国中小企業団体中央会では、「団体協約締結にあたって課題になるのが、組合員の意思統一。取引先事業者と交渉するにはまず組合員の意見の集約が必要だが、組合の中でその事業者と取引している会社が1社のみだと、意思統一が難しくなる。大手と取引している事業者が集まって、団体協約を結ぶための組合を立ち上げるというのも一つの手。そうすれば、意思統一の問題は解決する。団体協約は運輸企業にも有用なものと考えており、積極的に後押ししていきたい」と話している。(1月6日号)

【写真】中小企業庁のホームページより