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貸切バス更新制、16%が更新できず バスでは平成29年から許可更新制(2025/03/02)


専門家「トラックの過半数更新できない」

 過当競争に陥った運送業界を抜本的に改革するため、全日本トラック協会の坂本克己会長は許可更新制を盛り込んだ新法の構想を発表し立法化に向けて動いている。一方、貸切バス業界では既に許可更新制が実施されている。その仕組みや運用実態はどうなっているだろうか。
 
 平成28年1月に発生した長野県軽井沢町のスキーバス事故を受け、翌年4月から、貸切バスの事業許可について5年ごとの更新制が導入され、不適格な事業者が排除されるようになった。
 それまで国土交通省は、貸切バス事業の参入に際し、運転手の休憩・仮眠などの安全管理体制や開業資金、保険の加入状況などを書類で審査していたが、安全管理へのコスト面の審査はしておらず、いったん事業許可を得ると無期限で事業を展開できていた。
それについて一定期間ごとにバス会社の経営実態を把握する必要があると判断し、更新制の導入に踏み切った。
 更新時には、安全管理にどの程度のコストをかけるのかを示す「安全投資計画」と、安全面の経済的負担を適切にしていけることを示す「事業収支見積書」の作成が義務付けられている。
 これらが確認された上、次の場合には事業許可は更新されない。

 人件費、車両修繕費等について、所要の単価を下回る単価に基づく収支となっている場合。計画上、5年間連続で収支を赤字としている場合。 
新規許可について、申請直近1事業年度において申請者の財務状況が債務超過である場合。更新許可について、申請直近1事業年度において事業者の財務状況が債務超過であり、かつ、申請直近3事業年度の収支が連続で赤字である場合。
法令試験(30問)の正答率が90%未満の場合(貸切バス事業者安全性評価認定制度において一ツ星以上を取得している事業者は免除)。 
 バス更新制度の実際の更新状況はどうか。国交省によると、制度が始まってから令和5年度末までに、更新期限を迎えた事業者の総計は5262社にのぼり、そのうち870社が更新できなかった。 
 令和5年度だけについては485社が更新期限を迎え、72社が更新できてなかった。そんな状況下、詳細がまだ明らかになっていないトラック業界の更新制のうけとめ方はさまざまだ。
 貸切バス事業も行う日本城タクシー㈱の坂本篤紀社長は、「運輸安全マネジメント評価の費用が負担として大きいと感じているが、運送業界でも、低いハードルで更新制を設けて悪質な業者をふるいにかけていくこと自体は必要ではないか」と話す。
 
 また、長年、トラック、バス業界を専門とする武部宗晴行政書士(武部総合行政事務所、大阪市)は、「貸切バスの更新制度では、審査に非常に時間がかかっていることが課題だ。1回目の更新には7~8か月、2回目の更新には1年半から2年以上かかることが珍しくない。2回目には、1回目に提出した事業計画が見込み通りに進んでいるかどうかのチェックが行われていることがその大きな要因だ。トラック業界の事業者数は約6万3000社で、貸切バス事業者数の10倍以上になる。更新制が導入されれば、運輸支局が対応できるかどうか、懸念される。また、貸切バスなみの基準で導入されれば、トラック事業者の過半数は赤字のため、更新できなくなるのではないか」と指摘している。(3月3日号)