電話でのお問い合わせは072-882-6258
〒571-0079 大阪府門真市野里町31-15
課題は点呼の所要時間 自動点呼 大阪府の運送会社に聞く(2025/08/24)
ランニングコスト月額3万円
国土交通省は2022年4月より「乗務後自動点呼」の制度を開始し、2025年度中に「乗務前自動点呼」も導入する予定で現在、先行導入事業者による試行運用が行われている。自動点呼は、点呼の場に居合わせる必要は無い。現在、業界全体で約500か所以上の事業者が制度の先行導入を申請しており、多くの事業所で実運用が行われている。
国土交通省によると、乗務前の自動点呼については、点呼の実施方法を定める「点呼告示」の改正により、制度上は既に「対面と同等の効果を有する方法」としての実施が可能となっている。
しかし、実施にあたっては届け出に必要な様式を定める「運輸規則に関する解釈運用通達」の改正がまだ行われてないため、実質的な解禁には至っていないのが現状だ。
乗務前自動点呼を導入するには、「運輸規則に関する通達の改正と様式整備」と「国交省が認定した機器の導入」の2点を整備して届け出を行うことで、自動点呼を正式に導入することが可能となる。
大阪府の浅田運輸㈲では、自動点呼機器を導入しており、乗務後の点呼は既に自動点呼機器により行われている。乗務前点呼についても正式な認可を見据え、運行管理者の監視の下、本番と同じ環境で運用を実施している。
乗務前点呼は静脈認証から始まり、顔認証、アルコール検査、体温測定、血圧測定、睡眠や疲労のチェックが行われ、最後に免許証のチェックや車体番号の入力、連絡事項の共有が行われる。
点呼時のすべての記録はクラウド上に保存され、異常があれば運行管理者のスマートフォンに即時通知される。これにより、運行管理者が会社に出勤していない状態でも、点呼を行うことができる。
点呼設備は車庫にも設置されており、仕事を終えたドライバーは事務所に立ち寄らずに点呼を完了し、そのまま帰宅することもできる。
導入コストは会社の設備によって異なるが、100万円から200万円ほど。同社の場合、既に自動点呼の要件を満たす監視カメラが事務所に備わっていたため、導入コストを抑えることができた。
それに加えて、自動点呼は月額3万円程度のランニングコストがかかる。運行補助者の人件費を考慮すれば、コスト的には有利だ。
課題としては、点呼の所要時間が挙げられる。対人の点呼であれば、コミュニケーションを通してドライバーの健康状態を把握することが可能だが、ロボットではそれができない。
その代わりに体温測定や血圧測定でドライバーの健康状態をチェックするため、1人あたりの点呼時間がスムーズにいっても3分ほどかかる。朝の混雑する時間帯では点呼待ちのドライバーで行列になる可能性もあるので、会社の規模によっては1人1人の出勤時間をずらしたり、複数の機器を導入するといった工夫が必要だ。
また、自動点呼機器に何かしらのトラブルが発生した際にカバーできる仕組みを作ることも重要だ。同社では昨年9月から自動点呼機器を導入したが、今のところ故障やトラブルが発生したことはない。
しかし、何かしらのエラーで自動点呼機器が使えなくなってしまった場合に備え、同社の事務所では別にアルコール検査機も準備し、いざというときは対面点呼に切り替えられるようにしている。
柳本会長は自動点呼導入にあたり、「うちでは正式な認可が下りるまでの期間を利用して、本番と同じ環境で乗務前自動点呼を試験運用している。最初は操作に戸惑うドライバーも出てくるので、正式認可後に導入する事業者でも、最初の1か月は運行管理者が実際に監視している環境下で試験運用する期間を挟んだ方がいい」と話していた。(8月18日号)
【写真】自動点呼機器と柳本会長