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「運送会社らしくない」取り組みで業績8倍に 愛知県・ニシテ商会(2025/10/12)
ボーナスは社員の投票で決める
㈱ニシテ商会(西手保社長、愛知県名古屋市)は、2tや4tの箱車で自動車部品やパチンコ台を中心に運び、業績を伸ばしている。同社の成長をけん引しているのが、西手隼人常務だ。西手常務が掲げる「運送会社らしくない会社」を目指した数々の取り組みは、会社の業績を8倍にまで押し上げている。
同社ではボーナスを社員の投票で決める「ありがとうカード」という取組を行っている。これは普段の仕事の中で、現場の社員が感じた別の社員への感謝を、カードに書き記し、専用のボードに貼っていくというもの。
このありがとうカードの数が多い社員ほど、もらえるボーナスの額も多くなる。このカードは、社員間の不平等感の是正や、ポジティブな言葉の掛け合いによる社内の空気の良好化にもつながっている。
社員の健康にも特に気を配っている。社内にはトレーニングジムを設置している他、半年に1回、管理栄養士を招いた食育指導を行っている。健康診断の結果によって指導内容は異なる。
通常は女性の管理栄養士による優しい指導が行われるが、再検査となった社員には男性の管理栄養士による怖い動画や写真を交えた厳しい指導が行われる。
この遊び心が垣間見える取り組み内容には「『ネガティブな罰則』よりも『ポジティブな縛り』の方がいい」という隼人氏の考え方が反映されている。
社員だけでなく、その家族を意識した取り組みも行っている。
年に1回行われる社員投票で1位を獲得した社員には家族旅行がプレゼントされる。日程や行き先は社員が自由に決めることができるという。
また、ファイナンシャルプランナーを招いたセミナーを年に1回、家族向けに開催しており、NISAやイデコなどの資産運用について、説明を受けることができる。
同社ではインスタグラムで積極的に家族とつながっている。会社と家族がSNSを通じてつながることで、家族が会社内での夫の状況を把握したり、家族からの相談を受けるといったアプローチが可能となっている。
高校生インターンシップ(社会に出る前に実際の仕事を経験できる制度)を積極的に活用している。同社では7月、10月、3月の年3回にわたって、高校生のインターンの受け入れを行っており、ドライバーの仕事を横乗りで見学したり、倉庫作業や事務作業を実際に体験するなどをしている。
トラック輸送が重要な仕事であるということを知ってもらうと共に、会社について「ダメだと思ったところ」を正直に教えてもらう。隼人氏は「『高校生人材の獲得』という目的以外にも得られるものが多い」と話す。
高校生に仕事を教えることは、社員が自身の仕事についてを深く考えるきっかけにもつながる。職場を体験した高校生から得られる意見が大きなヒントになることもある。
例えば「かっこいい制服でコンビニに入店したい」という意見から、会社の制服デザインを従来の作業着からスタイリッシュなデザインへと変更した。「電話の対応が苦手」という声から、会社内の連絡手段を電話からLINEに移行した。
隼人氏は、「一つの取組の成果ではなく、全ての取組の積み重ねがこの結果につながった。あえて一番大きな要因を挙げるとすれば、それは『周囲の人達に恵まれた』ということ。施策を受け入れてくれた社員や、自分の面倒を見てくれた運送業界の先達のおかげで今がある」と話す。
【写真】左から、愛知県・大村知事とと西手常務 近年力を入れているのが、地域の子どもと共に夢を描く「ドリームプロジェクト」