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最初に求められたのは拘束時間 労基の立ち入りを振り返る運送会社社長(2025/10/16)
大阪のある運送会社に7月中旬、一人の労働基準監督官が立ち入り調査のために訪れた。当時の状況を運送会社社長が振り返る。
「陸運局みたいな事前告知は無かった。本当に何の予告も無くゲリラ的に突然来た。関係資料の提出を求められて直ちに監査が始まったが、『もし必要な資料がお揃いでなければまた後日お伺いしますよ』と柔らかな口調だった。ガチガチではなかった」と監査官の印象を語る。
最初に求められたのは拘束時間
最初に求められたのは、『拘束時間を見たい』だった。意外に引っかかったのは健康診断。『健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師の意見を聞いていないこと』と、是正勧告書に安衛法第66条の4の違反事項として勧告された。
『健康診断の結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針』というリーフレットを手渡され説明を受けた。
これは、通常勤務が可能かどうか、就業区分と就業上の措置の内容の医師によるコメントが必要だったが、それが抜けているという指摘だ。
この場合の対策としては、地域産業保健センターを活用して医師からの意見聴取を実施することが適当だ。
また、『過重労働による健康被害防止について』という書面で示されたのが、『面接指導等を実施するにあたり、労働者による申し出が適切になされるようにする。労働者が自己の労働時間を確認できる仕組みなどを予め定めるなどの措置を講じ、これを労働者に周知徹底すること』という項目。
この項目に改善措置を講じ、改善の状況を1か月半後までに報告しなさいと指導された。
有給消化の状況分かるように計画を作れ
これは、ドライバー自身が有給休暇の消化を今何日しているか、見て分かるように計画を作れということだ。労働基準法で定められた労働時間管理の義務を果たすために重要な項目だが、「計画を提出して下さい。でもまぁ、あくまでも計画なのでね!と、柔軟な態度だった」という。
また、大阪府内では、令和6年の職場における熱中症による休業4日以上の死傷者数が 94人で前年に比べ40人の増加となり、 そのうち9人が死亡している。この労働災害多発状況を鑑み、労働基準監督署が注意喚起を行っていることから、「熱中症対策も重点的に見られた」と話す。
熱中症の重篤化を防止するため、労働安全衛生規則が改正され、令和7年6月1日から施行されているので具体的に準備・実施する必要がある。
同社ではドライバーの着替え用に社名入りのユニフォームや、経口補水液、塩分チャージタブレット等を準備してあり、それを見せて説明した。
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【参考】【労基の監査官がチェックする主な項目と帳簿の一例】
運行の実態の確認
改善基準告知違反がないか確認、1日拘束時間、月拘束時間の確認連続運転時間も超えていないか。
労働条件の確認
労働条件と就業規則が一致しているか。労働条件通知書交付状況や各種届出との整合性、残業代の支払いが適正か。管理監督者の範囲は適正か年休の取得状況や5日間の強制付与状況。
健康管理や安全衛生管理体制の確認
・定期健康診断の実施状況や、長時間労働者への面接指導
・安全衛生委員会の開催状況や、産業医・衛生管理者などの選任状況・事業場内の安全衛生管理
備え置かなければならない法定帳簿
① 労働者名簿
② 賃金台帳
③ 出勤簿
④ 年次有給休暇管理台帳
これらを監査官が精査した結果、その場の違反状況によって、是正勧告書、指導票の交付、使用停止等命令書による処分が出される。
(10月6日号)