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秋田の「伝説の講師」平塚氏とは? 運行管理者試験合格日本一に貢献(2022/09/04)


アナログの熱血指導


「わかってない」受講生に直接声かけ


 秋田県は運行管理者試験合格率で平成17年度第1回試験から令和3年度第2回試験まで17年間計33回の試験のうち、31回合格率日本一となった。平成19年度第2回試験では合格率84・7%という驚異的な数字を叩き出した。合格率日本一は、運行管理者試験対策勉強会で平塚捷悦(しょうえつ)氏が講師を務めてからとなる。

 秋田県トラック協会では、毎年2回の運行管理者試験の時期が近づくと、「運行管理者試験対策勉強会」を開催している。勉強会の講師を平成17年からずっと勤めているのが平塚氏だ。
 平塚氏は79歳。平成15年に日本通運を退職後、秋ト協の総務部長を平成22年まで勤めた。現在は秋田ト協の運行管理者試験対策アドバイザーとして、勉強会の現場で教べんをふるっている。
 平塚氏が秋ト協に入った平成15年当時、秋田県の運行管理者試験の合格率は全国平均を大きく下回っていた。秋ト協は試験の合格率を引き上げるべく、平成17年に勉強会を立ち上げたが、この時、大手運送会社で運行管理者の経験があった平塚氏に講師として白羽の矢が立った。
 平塚氏の勉強会は1日目に、運送事業法を4時間、車両法を1時間、労働基準法を1時間、改善基準告示を1時間30分、実務上の知識を30分学ぶ。2日目に、交通法1時間、出題5分野の過去問題(3回分)と重点事項について説明したプリントの解説を7時間行う。
 運送事業法の問題は8問と最も多く出題されるため広範囲にわたって解説し、実務上の知識については、乗務員の点呼や健康管理などの日常業務に関する問題について、適(〇)不適(×)を選ぶ練習を繰り返し行う。

 勉強会について、平塚氏は次のように話す。
「運行管理者には事業者(経営者)にかわって輸送の安全を確保する責任が課せられる。運行管理者という国家資格試験の難関を突破するには、相当の覚悟と努力も必要。まず、受験生にはそうした心構えをしっかりと持ってもらう。受験生の多くは改善基準告示に関する計算問題(拘束時間、連続運転違反、休息期間違反等の計算)を苦手としている。
そのため会場にいる全員が苦手意識を克服できるようになるまで、時間をかけて粘り強く指導している。また、勉強会でよくわからなかったことについては、会の終了後、いつでも質問してくれて構わないと言っている」
 近年、こうした勉強会やセミナーは、パワーポイントと大型スクリーンを使いながら行われることが多いが、平塚氏はホワイトボードに表や計算式などを書き、会場にいる受講生一人一人の顔色(表情)を見ながら指導を行っている。
 「あらかじめ作り置きされた資料をスクリーンに映し、それを順番に眺めるだけの講習では、その場で『わかった気になる』だけで頭には何も残らない。教えていて、この人は『わかっていないな』という人は顔色を見ればわかる。休憩時間に、その人に直接声をかけ、具体的な計算方法や問題文の解釈の仕方などを教えてあげることもある」

 また、「自分の目、耳、手をフルに使って勉強することが大事。実際、この勉強会で受講生が使うテキストは、びっしりメモ書きされて真っ黒になる。2日間の日程だが、生徒は限界ギリギリまで頭を使うし、私自身もヘトヘトになる」とも話す。
 このような熱血指導を行う平塚氏だが、常日頃から、市販のテキストに記載されている法令については、わかりやすく解説し直したり、過去の出題傾向を独自に分析してプリントにまとめるなど、合格率アップのための研究や工夫も怠らない。
 「試験問題を作る担当者は、せいぜい2~3年で異動になってしまうが、私は何十年と運行管理者試験の問題と向き合い、研究し続けている。法令の改正については100%出題されるから、国のホームページなどを見て、解説もこまめに作り直している」
 「伝説の講師」平塚氏の噂は全国各地に広まり、関東、関西、九州、果ては沖縄にまで、勉強会の講師として招かれるようになった。今年、全日本トラック協会と秋田県トラック協会は、こうした平塚氏の運行管理者試験の合格率向上に寄与した功績を称え、表彰状と感謝状を贈っている。


 【写真】身振り手振りで熱血講習を行う平塚氏