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野球部創設で社員数が倍に   静岡・山岸運送グループ(2022/11/13)


目標は都市対抗野球出場


 山岸運送グループ(山岸一弥社長、静岡県島田市、250台)は2017年4月、社会人硬式野球チーム「山岸ロジスターズ」を立ち上げた。
山岸社長は、人材不足を解消するために、若者が「この会社に来たくなる理由」を作ろうと考えた。大学まで野球をしていた息子の山岸龍大取締役から、名選手でも学校卒業後野球を続ける場所がなく一般就職せざるを得ない人が多いことを聞いていた。


「物流はやりがいのある仕事で、社会にとって重要な任務を背負っている。それを言葉でアピールしても、経験しなければ伝わらない。まずは野球をきっかけに入社してもらい、物流業界の良さや仕事のやりがいを肌で感じてほしい」と考えたのだ。
 しかし、野球チーム創設には、会長だった父を含めて社員300人全員が反対した。若い人材確保につながると、どれだけ説明しても理解してもらえなかったが、賛同を得られないのは想定内だと考え、創設に向けて進めていった。
 野球チームの監督として招へいしたのが天野義明氏だった。天野氏は静岡出身で、日本生命野球部では10年連続で社会人野球の全国大会「都市対抗野球大会」に出場した名選手だ。引退後は日本生命静岡支店に赴任。営業で同社を訪れた縁で、高校生だった龍大氏のバッティングを見てもらうなど交流があった。
 2016年5月、全国の強豪大学野球部に野球部創設のDMを送る。そして8月、50人以上の入部希望者が入部試験を受けた。面接では、仕事内容や8時間しっかり働くことを説明した。
 大企業では、野球で活躍しても引退後は会社に居場所がなくなり退職するケースが少なくない。同社では、全員を幹部候補生として迎え、引退後は管理職となることを確約した。

 2017年4月、25人の新卒社員が入社し、ロジスターズに入部した。職種はドライバー8人、倉庫作業13人、事務員3人、整備士1人。
ドライバーは朝5~6時頃から、倉庫作業員は6~7時頃から8時間勤務する。月曜はオフで全体練習と自主練習が一日おきにあり、16時頃から約2~3時間練習する。翌日の業務に負担のないよう、キリのいいところで切り上げるよう終了時間は各個人に任せている。
 野球部設立に反対していた社員たちは、「仕事100%、野球100%」を合言葉に仕事も野球も手を抜かない若者たちを目の当たりにし、3か月もたたないうちにチームを応援するようになった。 
 地元で試合をするときは、多くの社員や家族が球場で声援を送る。
山岸社長は、「野球をしない社員も含めて野球部が話題にのぼることが多い。相乗効果で社内全体の雰囲気が格段に良くなった。物流業界は一匹狼タイプの人が多いが、以前より社内がまとまったように見える。目標は、都市対抗野球に出て、勝つこと。まだ経験は浅いが、必ず全国の舞台に立って常連になる」と意気込んでいる。
山岸ロジスターズは年々力を付けており、今年6月に開かれた全日本クラブ野球選手権静岡予選では2度目の優勝を果たした。


 若者が集まったことで会社が活性化し、「若者の多い会社」というイメージから、野球をしない若者も含めて入社希望者が増えた。社員数は300人から560人に増え、平均年齢はチーム設立前の44歳から38歳に若がえった。
 ちなみに今年の新卒採用は10人(予定)、うち9人がロジスターズ部員だ。
また、野球部を作ったことで会社の知名度が上がり、大企業との取引が続々と生まれている。営業で野球の話題になることも多く、取引先の社員もロジスターズを応援し、勝敗をチェックしているという。
 山岸社長は、「小学校から大学まで野球を続けてきた部員には、野球を通じた数千人の人脈がある。また、仲間意識が非常に深く、それは人生の『宝』だ。野球を続けて引退し、管理職になった社員たちが会社に与える良い影響ははかり知れない」と話している。(11月7日号)

【写真】2022年6月に開かれた全日本クラブ野球選手権静岡予選で2度目の優勝を果たした