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「立ち往生は人災だ」 検証  大雪によるトラックの立往生(2023/03/19)


今冬も新名神など各地で発生

 1月24日夜から日本列島に寒気が流れ込み、各地で大雪となり新名神高速道路では大雪の影響で、三重から滋賀に向かう下りで最長約66㎞にわたる立往生が発生した。高速道路の渋滞が解消されるまで2日近くかかり、その間、多数の乗用車、トラックが高速道路に閉じ込められた。大雪は事前に予報されていたが、なぜ立ち往生に巻き込まれのか。

 奈良県の運送会社A社の社長は「うちのトラックの約半分が、この影響を受け渋滞に巻き込まれた。ニュースで報道されているように丸一日、車内に閉じ込められたドライバーもいた。幸い、ドライバーは健康被害を訴えてなかったが、最近はうちのドライバーも高齢化しており、毎年このような事態が繰り返されれば、いつか倒れてしまうのではないかと不安になる。今回の寒波については、『近年類を見ない猛烈な寒さになる』『不要不急の外出は控えてください』とあちこちで報じられていたが、『荷物の到着が遅れても構わない』『配送を取りやめてもいい』と連絡をしてきた荷主や元請けは一件もなかった」と話す。
 
 滋賀の運送会社C社の専務は、「今回は大雪が予想されていたため、ドライバーにはスコップや長靴を持たせるなど、雪道への備えを行わせたが、24日の午後、トラック1台が新名神の信楽インターチェンジ付近で立往生に巻き込まれ、会社に戻ってくるのが丸一日遅れた。雪が降っても他の運送会社が走っている間は、うちだけ『運行を遅らせる』『取りやめる』とは言い出せない。トラック協会や国は、『大雪が予想される場合、荷主は運送会社からの配達の遅れや中止の申し出を受け入れる』といった指針を、荷主に対し強く働きかけてほしい」と話す。
 大阪の運送会社D社の社長は次のように話す。
「今回の立往生に、うちの会社のトラック2台が巻き込まれた。1台のトラックは12時間、もう一台のトラックも14時間以上閉じ込められた。個人的な見解だが、今回の立往生は、『天災』ではなく『人災』ではなかったのかと言いたい。京滋バイパスも名阪国道も早くから通行止めになっていたのに、NEXCOはなぜ新名神だけ止めなかったのか。 
大雪の当日、私も早朝からトラックに乗っていたが、大阪南港から阪神高速に乗ろうとしたら通行止めになっていた。その時の付近の積雪は2㎝程度だった。 
 草津JCT付近で渋滞が発生し始めた時点でいったん高速を閉鎖し、除雪作業を優先するなどの対策は打てたはず。今回の大雪で乗客を電車に閉じ込めたJR西日本は、記者会見で『積雪が基準値に達していなかったため、ポイントの融雪装置を稼働させなかった』と釈明していたが、高速道路の通行止めにも、『〇〇㎝以上の積雪があれば通行止め』など何らかの基準や目安を示して欲しい。そうした基準があれば、運送会社としても、『明日は〇〇㎝以上の積雪が見込まれ、高速が通行止めになると予想されるので、運行は取りやめます』といった『言い訳』を荷主に対して言える。いつ通行止めになるのかわからない状況では、荷主に対して立場の弱い運送会社は、立往生に巻き込まれるのを覚悟で走らざるを得ない」

 2月8日、NEXCO中日本・西日本は、新名神での立往生発生の原因について、「渋滞による車の滞留は一時的と判断し、通行止めをためらったこと」「路面の凍結で、除雪作業などに想定以上の時間がかかったこと」などを挙げ、「お客さまや地域の皆さまには、大変、ご不便とご迷惑をおかけしました。今回取りまとめた対応策を確実に実施し、今後の大雪時の対応に万全を尽くしてまいります」と謝罪している。(3月20日号)