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異なる会社間で中継輸送   福岡・アイエヌライン(2023/07/02)


2台分の車両経費の削減に



 ㈱アイエヌライン(奈賀幾次郎社長、福岡県)は、労働時間の短縮のため7月から九州―関西間の運行で熊本県の会社と連携し、ドライバー交代方式によるスイッチ輸送(中継輸送)を開始した。北九州―関西間は約600キロの距離があるが、中間地点である広島に中継輸送の拠点を設けることで、日帰り運行できるようにした。田村務副社長は、「他の会社とも手を組んでスイッチ輸送をやっていきたい。人と車を出し合って、2024年問題を乗り切っていきたい」と話している。
 

 同社は現在、北九州―関西間で大型車による複数便の往復輸送を行っているが、毎日、九州と関西から荷物が出荷される。そのため運送を途切れないようにするには、車両と乗務員は1往復あたり2台・2名は必要となる。 
 しかし、来年からの残業960時間規制、改善基準告示改正による拘束時間284時間などの規制を、事業収支を確保しながら遵守していくには、非常に厳しいものがある。
 そこで、田村副社長は、「1社で時間短縮を図っていくのは難しい。他社と連携を図っていかねば」と考え、他社とのスイッチ輸送を模索。
荷物を積んだトラックは九州から関西、関西から九州へ行くが、各々の乗務員が中間点である広島で折り返し、九州―広島間で日帰り、関西―広島間で日帰り運行できるように提携先を探していた。
 そして、同じく九州―関西間の長距離輸送を手掛ける㈱永井運送(永井正人社長、熊本県)にスイッチ輸送の話を持ち掛け、永井運送の広島営業所を中継輸送の拠点にすることで合意に至り、7月からスタートすることになった。


 両社の担当者が話し合いを重ね、一方のトラックが中継拠点に到着した場合、そのトラックが別の乗務員によって運行するまでの待機時間は1時間以内とする運行ダイヤを組み、渋滞などのイレギュラーな事態が起きた場合でも乗務員の拘束時間を抑え、荷物の遅延をカバーできるよう設計した。
同時に業者間の相互協定などの法的手続きも進めた。
スイッチ輸送は運送業界内で広がりつつある。しかし、同じ会社やグループ会社間で行われ、また、トレーラーでヘッドを交換して行う場合が多く、今回のケースのように異なる会社間でドライバーが交代して行うのは珍しい。
 スイッチ輸送を行うことによるメリットは大きい。1日当たり2便を往復させる場合、通常なら4台の車と4名の乗務員が必要であるが、スイッチ輸送では運行ダイヤ次第では2台の車と4名の乗務員で済む。2台分の車両経費が減らせるということだ。
 田村氏は、「まずは、自動車部品から始める。うちが広島の会社のトラックに乗り、広島の会社がうちのトラックに乗る。共通の荷主さんにも快く了解を頂けた。スイッチ輸送では、乗務員は日帰りできる。片方の荷役作業もいらなくなり時間短縮もでき、生活設計もしやすくなる」と話す。

 
【写真】スイッチ時の打ち合わせを行うアイエヌラインと永井運送のドライバー