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今年上半期 飲酒絡む重大事故5件発生(2023/11/05)
後絶たない飲酒運転
「点呼終わった途端に飲み始める」
国土交通省がまとめている「事業用自動車安全通信」によると、今年1~6月のトラックが加害者となる重大事故は18件あったが、その中で飲酒運転が絡んだ重大事故が5件発生していたことがわかった。岐阜県内の高速道路で大型トラックが中央分離帯に衝突した事故では、ドライバーが運行中に酒を購入して飲んでいた。
事業用自動車では、点呼時にアルコールチェックを行っているが、効果は上がっているのか。 昨年8月に筑波大学医学医療系の市川政雄教授は「乗務前後の酒気帯び確認でトラック運転者の飲酒運転は防げない」という運送事業者にとって衝撃の研究結果を発表している。研究では、1995年から2020年までに全国で発⽣したトラック運転者による交通事故のデータをもとに、飲酒運転事故の割合の推移を分析した。
分析の結果、トラック運転者による飲酒運転事故の割合は事業⽤、⾃家⽤ともに2001年から減少に転じており、その年変化率は、事業⽤トラックでは2001年から2012年までで13・5%減、⾃家⽤では2001年から2011年までで14・9%減だった。
しかし、その後は、事業⽤・⾃家⽤トラックの運転者による飲酒運転事故の割合は、⼤きく減少することなく推移している。
市川教授は、「結果として、事故を起こした運転者に関する限り、アルコール検知器を⽤いた酒気帯び確認には、飲酒運転を防ぐ効果はなかったといえる。トラック運転者は拘束時間が長く、車内で休憩・休息を取るケースが多い。
そのため車内で飲酒をする運転者も多く、一般の労働者に比べ、勤務中の酒気帯びリスクは高い。従って、乗務前後の酒気帯び確認だけでは抑止効果は薄く、確認の⽅法を抜本的に改めるか、何か別の対策を講じる必要がある」とし、対策の一つとして、⼀定のアルコール濃度を検知するとエンジンがかからない「アルコールインターロック装置」を挙げている。
飲酒運転をなくすにはどうしたらいいのか。
三重県の運送会社A社の社長は、「飲酒は個人の習慣だから、正直、改めさせるのは難しい。過去にはうちにもトラックの中で酒を飲むドライバーがいて、いつ飲んだのかわからないビールの缶が車内に転がっているのを見つけたことがある。運送業界は人手不足で、ドライバーにとって転職は買い手市場だが、業界全体でモラルの無い、おかしなドライバーを排除するようにしていかないと、飲酒運転は無くならない」と話す。
また、大阪の運送会社C社の社長は「飲酒運転の防止策として、ドライバーに携帯式のアルコールチェッカーを持たせ、中間点呼で酒気帯びを確認する方法もある。しかし、酒を飲みたいドライバーは、点呼が終わった途端に飲み始めるから、抑止効果ほとんどないだろう。いつも私はドライバーに『必要な恐怖心を持ちなさい』と言っている。飲酒運転で事故を起こしたら、違反をしたら、仲間に迷惑をかける。最悪、仕事を辞めなければならない。退職金ももらえなくなる。そうなったら、自分がどうなるのかを常に想像してもらいたいからだ。
逆に言えば、ドライバーから『こんな会社、いつクビになっても構わない』と思われないように、会社としてきちんと労働環境を整備し、退職金制度なども導入している。『この会社に長く勤めたい』と思うドライバーが増えれば、乗務中に酒を飲むような非常識なドライバーは自然といなくなるはずだ」と話す。(11月6日号)
【写真】飲酒運転防止に効果があるとされるアルコールインターロック装置