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コンサル会社が運送会社をM&A(2024/09/18)


石川氏がケイエスシー物流の社長に就任

 ㈱ケイエスシー物流(大阪府摂津市)は今年8月に前社長の島袋明氏に代わり、物流業界向けコンサル会社・㈱ティーラック(大阪市)代表の石川亮氏を新社長として迎える形でM&Aを締結した。

 ケイエスシー物流は昭和58年に創業。JTBから委託を受け旅行用パンフレットの配送を行っていたが、現在は杉村倉庫が扱う富士フィルム、コピー用紙、トナー等をメインにルート配送している。現在従業員18名、トラック15台、軽バン3台を抱える。
 2005年に島袋相談役が3代目社長に就任し、事業を運営していたが、近年は後継者不在で会社を誰に託すか悩んでいた。
 外部の見知らぬ会社とのM&Aも検討したが、屋号が変わってしまう、経営方針が変更になるといった点が引っかかり、今いる従業員を守れないのではと、断念した事もあった。
 娘婿に跡を継がせる選択肢もあり、実際話も進んでいたが、苦労するのは明らかだろうし、やはり無理だと判断した。
 そんな折、以前から仕事上でつきあいのある石川社長と会った際に娘婿の後継者話が無くなったと伝えたところ、石川社長が、「僕にやらせてください」と後継ぎを申し出た。
 実は石川社長は1~2年前から実運送事業をやりたいと思っていたので、ケイエスシー物流を引き取る方法もあると考えていた。

 石川氏は元々コンサルの立場から運送事業者へ経営のアドバイスをしていたが、たまに『いや、先生の言う事は正論だがドライバーへそれを伝えたら辞めてしまう』というような事業者との感覚のズレを感じることがあった。
 確かに実際の現場では違うんだろうなと思っていたが、自分の考え方がどこまで通用するのか、実運送の経営者となってやり方を模索していくことで、コンサル業にも良い影響があるはずだと考えていた。
 島袋相談役は、長い付き合いがあり信頼のおける石川社長からの申し出に、「よし!石川さんで行こう」と決断した。
 島袋相談役は、「買い取られるというよりも、従業員の雇用が継続されるという安心感の方が大きい。今はとにかくホッとした。安心して任せられる」と話している。
 石川氏は、既に半年間、週1の頻度でケイエスシー物流に経営トップとして出社し、経営会議を通じてドライバーへ指示を出している。
 実運送の難しさは一言で言えばやはり人。一般企業と比べると、上が決めたことに対し簡単に伝わらない。石川氏はどうやって伝えたらいいのかと試行錯誤している。 
 「ドライバーに限らず人間は変化を嫌うし、今まで通りを好む。そういった中で強引に物事を推し進めるのか、信頼を積み重ねてからにするのか。リアルな実運送の世界に自分が飛び込む事で、今後相談に来た運送事業者に対しても、より親身に答える事が出来る」

 石川氏はケイエスシー物流で売上を上げ利益を確保していくために、様々な手を打ち始めている。 
 従来の仕事だけではなく、必要に応じて新規開拓もしている。 
 ケイエスシー物流の実務部分はナンバー2の番頭さんがしっかりやってくれているので、ある程度任せられる。当然借り入れもあるが、大きなマイナスは無く、安定した売り上げを確保できると見込んでいる。
 石川社長は、「運送業とコンサルタント業は別物ではあるが、実は密接に関りあっている。相乗効果でお互いに良い作用を与え合えあえるようにしていきたい。二足の草鞋を履いて頑張っていく。やるしかない!」と新たな挑戦に目を輝かせていた。
(9月16日号)

【写真】M&Aを締結した島袋相談役(左)と石川社長(右)