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車両台数3100台に フジHD 「第二会社方式」で積極的にⅯ&A展開(2025/05/14)
継続見込みある事業のみを移転
フジトランスポート㈱(奈良県奈良市)の持株会社・フジホールディングス(東京都)は、Ⅿ&A(企業買収)を積極的に推し進めている。フジHDグループの企業数は現在22社あり、車両台数は計3100台。2025年6月期の売上高は700億円に達する見通しだ。
フジHDは、松岡弘晃氏が社長に就任した2001年以降、奈良県内が中心だった区域運送から郵便の長距離輸送や航空貨物輸送など広域幹線輸送を柱とする業態で拡大。その後は、労働力不足に対応する経営戦略として、中継輸送とその拠点の拡大に取り組んでいる。現在、北海道から鹿児島まで全国に140の拠点を持つ。
同HDで主に行っているのが、「第二会社方式」と呼ばれるM&A手法。これは、経営不振に陥っている会社において継続見込みがある事業を切り離し、事業譲渡などのM&A手法によって受け皿会社(第二会社=フジHD)に移転し、不採算事業は従来の会社に残したまま、破産などにより既存会社を消滅させる方法。この方式により収益性のある事業は、新会社において再出発できる。
フジHDは2023年から、阿部運送㈱(山形県酒田市)、大和エアカーゴエキスプレス㈱(岡山県倉敷市)、㈱霧島運送(宮崎県宮崎市)、柴田運輸㈱(大阪府門真市)、㈱カズショウ(奈良県奈良市)、㈱小笠原運送(愛知県小牧市)の6社を、第二会社方式で買収した。このⅯ&Aが、年間2~3件のペースで行われている。
いずれの会社も買収後に破産したが、従業員はフジトランスポートもしくはグループ会社が引継いで従業員の雇用は守られ、また、経営者は自己破産せずに済んでいる。買収された会社が利用しているのが、「経営者保証に関するガイドライン」を活用したものだ。
経営者保証ガイドラインとは、金融機関が中小企業に融資を行う場合に、個人保証を求める際の対応についてまとめたルールのことで、2014年2月より適用が始まった。
中小企業が銀行から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となるが、従来は会社が破産すれば、その保証人となっている経営者個人が会社に代わって債務を返済することが求められ、その返済ができないことで、自己破産していた。
しかし、同ガイドラインを活用することで、経営者は破産及び信用情報登録機関への登録を免れ、再出発できる可能性がある。つまり、経営者に一定の資産を残すことを認めている。
経営者が自己破産すると、保証人の手元に残せる資産は自由財産(99万円までの現金)だが、同ガイドラインでは、保証人の手元に残せる資産は自由財産に加え、一定期間の生計費や華美でない自宅など破産手続では認められない資産を残せる可能性がある。
フジトランスポートの松岡社長は、「会社がつぶれても経営者が自己破産しなくていい制度。債務超過でボロボロの会社でも売却することができ、買収する側は従業員の雇用も守れる。今後、さらにこの制度の活用が増えていく可能性がある」と話している。(5月5日号)