電話でのお問い合わせは072-882-6258
〒571-0079 大阪府門真市野里町31-15
たらい回し3件目に受け入れ トラック修理(2025/05/21)
深刻化する整備士不足 修理費上昇にも
整備部門内製化の動きも
「先日、故障でディーラーにトラックを持ち込んだが、断られ、紹介された2件目も断られ、3件目にやっと受けてもらった」と話す運送会社社長。最近、整備工場にトラックを持ち込んでも修理を断られる、他の工場にたらい回しにされるという事例が起きている。その背景には深刻な整備士の人材不足があるようだ。
JASPA(日本自動車整備振興会連合会)の調査によると、2023年時点で全国の整備士の不足数は約6万人。全国の自動車整備士の総数は約32万人であり、約16%の人材が不足している計算だ。
整備士養成学校の志願者数も年々減少している。2012年は志願者数約1万8000人だったのが、2022年には1万2000人近くになっており、一部の学校では定員割れが常態化している。
また、工場自体の数も減少傾向にある。国土交通省とJASPAの統計によると、2013年の整備工場の数は全国で約9万3000件だったが、2023年は約8万5000件と、この10年間で約8000件も減少した。
地方の小規模の認証工場が後継者不足やEV対応の流れについていけずに廃業していることが原因と見られている。
北海道や東北などの一部の地域では半径10㎞圏内に整備工場が存在しない空白地帯も発生し、「整備難民」の増加も深刻だ。
こうした人手不足を受け整備業界では、「特定技能による外国人労働者の受入れ」や「中高生向けの職業体験」「職業訓練校での整備士育成支援」などの取組も行われている。北海道や愛知など一部のトラック協会でも、整備士育成の助成金を支給するといった取組が行われている。
さらに、技術開発の進展により近年の自動車には数多くの電子制御装置が搭載されるようになっていて、人手不足と相まって修理費を押し上げている。
ある自動車保険会社の担当者は、「人手不足のため、修理工場が預かる期間が伸び、その間のレンタカー代が高くなる場合がある。また、例えばフロントガラスにはカメラなどの安全装置が装着されているので、フロントガラスが壊れた場合、カメラも含めてすべて交換しなくてはいけなくなるなどで、修理費が跳ね上がる場合も多い」と説明する
整備業界が大きな転換点を迎える中、運送会社側にできることは何があるか。
ある運送会社の経営者は、「整備工場との日頃の付き合いがやはり大事。相手に横柄な態度をとったり、無茶ぶりを要求するような会社だと、修理が後回しにされる事もあるんじゃないか」と話す。
また、別の運送会社の経営者は「うちでは整備してもらえない時に備えて、スペアの車両をきちんと確保している。車検の修理が昔は2日だったのが4日になったように、今はどこも人手不足の状態。だからそういうことは折り込んで動いていくのが大事」と話す。
修理費高騰への対策としてある運送会社の社長は、「トラックのパーツがユニット化されるようになっている。整備士は昔ながらの技術を生かすのではなく、ユニットの一部の不具合の場合でもまるごと交換しようとすることが多い。そのため、『どこが悪いのか?』と問いただす」と、必要な部分のみ対応して欲しいと伝えるようにしているという。
板金会社を買収して修理業務を内製化した運送会社も出てきているが、別の運送会社の社長も、「今後、車検以外の修理を内製化することを視野に入れている。建物など、どんな設備が必要でどれくらいの費用がかかるかを知るため建設会社に見積もりを出してもらったり、金融機関に融資してもらえるかどうかの相談もしている」と話していた。(5月19日号)
【写真】整備士の平均年齢は47・6歳 29歳以下の若手は全体の13%にとどまる