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クローズアップ itiran

退職代行使い事故弁済金逃れ(2026/02/04)


賠償金はドライバーと会社の双方に責任

 昨年、退職代行サービスを使って運送会社を辞め、別の運送会社に就職したドライバー。前の会社で起こした事故の弁済金が残っていた。別の会社で働き始めてから、本人の自宅に前の会社の社長から催促の手紙が来るようになったという。
運送会社のドライバーが事故を起こし、会社から賠償金を請求されるケースがあるが、実際に事故が起きた場合、支払い義務はどのように扱うのが適切なのだろうか。

 今回のドライバーについては転職(退職)しても賠償責任が消えることはない。
退職は契約の終了であって、法律では、故意または過失で他人に損害を与えた場合、その者は損害を賠償する責任があるとあり、従業員だから、ではなく本人への責任であるため、退職しても賠償義務は残るためだ。
 また、今回のように運送会社から雇用されたドライバーが業務中に事故を起こした場合、事故によって生じた損害賠償責任はドライバーと会社の双方に生じる。これは民法715条に定められた、「使用者責任」によるもので、雇用主も事故の責任を負うとするものだ。
 当然、別の会社に転職しても支払い義務を逃れることはできないが、損害の全額をドライバーが負担する必要は無い。ドライバーが飲酒運転をしていたり、故意に会社に損害を与えたような悪質なケースであったりした場合にはドライバーに全額の賠償が認められることもある。

 仮に就業規則で「事故を起こした場合、○万円を支払う」という規則がある場合、これは労働基準法に反しているため無効となる。また、事故損害金の支払いについては、労働基準法により給料は全額払いの原則が定められているため、給料からの天引きは認められない。
 では会社とドライバーで、どの程度の割合をそれぞれ負担するのが適切なのか。これは明確に法律で定められているわけではないため、ケースバイケースになってしまうようだ。
 神戸市で2019年、暴走したトラックが川に転落して運転手が死亡し歩行者ら8人がけがをした事故があった。車両整備を怠ったとして業務上過失致死傷罪に問われた運送会社所長に対し、神戸地裁は禁固1年4か月を言い渡している。
民事では、会社が1744万円を被害者に支払った。この時、運転手がエンジンを切らなかったことやサイドブレーキを十分に引かなかったことなどの過失が認められ、裁判所は4分の1を会社から従業員に請求することを認めている。
過去の判例を見ると、会社からドライバーへの請求は実際の損害額の3分の1程度を上限とすることが大半のようだ。

 実際に運送会社で事故が発生した場合の損害賠償は、どのように定めているのか。よくあるのは無事故手当2万円を支給し、事故をしたら5か月で10万円など免責分の支給をストップするものだ。
 埼玉県の運送会社の取締役は、「弊社では毎月無事故手当を支給している。事故があった場合、当事者と班長2名、主任、運行担当課長、次長、私の7人で事故評価委員会を開催する。 軽微な場合は実損害額、保険を使った場合は免責額を上限として、無事故手当の不支給月数を協議する」としている。
 近畿圏内で地場を中心に運ぶ運送会社は、「ドライバーが事故を起こした場合、一切の請求や減給はない。会社としては予想外の出費になるが、そこをドライバーの負担にさせることは、ドライバーの生活にも直結してくるので、そこの負担軽減を優先している。
 ただしドライバーに責任が無いわけではないので、事故後の安全教育、社長・専務など管理者の横乗りなど、再発防止教育は徹底させている。教育期間は無制限で、管理者が問題無いと判断できるまで。必要であれば配置転換も行う」と話す。(2月2日号)